TPP交渉越年へ コメなどの「重要5項目」はなぜ重要か?
高い関税で保護
一番大きな理由は、この5項目の内外の価格差が大きいこと、つまり、海外の農産物に比べて高いためです。もし関税を撤廃したら、海外から安価な農産物がどんどん輸入され、消費者は国産のコメなどから安い海外産にシフトするでしょう。農林水産省では、TPP交渉で関税を撤廃した場合、日本の農業生産額は3兆円減少すると試算しています。このうち重要5項目が占める割合は約8割。「重要5項目」とは、高い関税をかけないと守れない農産物のことで、そのため貿易自由化の国際交渉では例外扱いされてきたのです。 しかし、TPPは自由化率100%を目指すのが原則です。参加国には全品目の関税撤廃を要求する国も多く、交渉の決着は自由化率95%以上になると予想されています。「重要5項目」は加工品を含めると586品目あり、その割合は日本の全品目9000のうちの6.5%。重要5項目を守ろうとすれば、自由化率は93.5%にしかなりません。これまで5項目を「聖域」としてきた政府・自民党ですが、TPP交渉をまとめたいのなら「重要5項目」を見直さざるを得ない状況なのです。とはいえ、TPPには日本の農業の将来がかかっています。守るべきものは守って、自由化すべきものはする。「重要5項目」で政府の交渉力も問われているのです。 (野中ツトム/清談社)