TPP交渉越年へ コメなどの「重要5項目」はなぜ重要か?
シンガポールで開かれていたTPP(環太平洋経済連携協定 )交渉の閣僚会合は10日、「年内合意」を断念した形で閉幕しました。来年1月に再び閣僚会合を開くとのことですが、最大の焦点は輸入品にかける関税の撤廃。中でも注目されているのが「重要5項目」の行方です。日本政府は(1)コメ(2)麦(3)牛肉・豚肉(4)乳製品(5)甘味資源作物(砂糖など)を「重要5項目」とし、関税撤廃の例外にする方針です。この「重要5項目」は、これまでの貿易自由化をめぐる日本の国際交渉でも常に特別扱いを受け、「聖域」として守られてきました。 どうしてこれらの農産物を守らないといけないのでしょうか。
「5項目」を守る理由
そこにはまず、国内の食料自給率の問題があるといわれます。農水省が2013年8月に発表した12年度の食料自給率はカロリーベースで39%。この自給率39%は先進国のなかでもかなり低い数字で、それだけ日本が食料の多くを輸入に頼っているという見方もできます。こうしたなかで海外から安い農産物が増えると、国内の食料自給率はさらに低下するかもしれません。農水省は日本がTPPに参加した場合、自給率は39%から27%に低下すると試算しています。ただし、カロリーベースでの自給率には異論もあり、諸外国と同じように生産額ベースで算出すると日本の自給率は69%。けっして低くないという意見もあります。 もうひとつは、農家の暮らしを守るためです。日本はコメなどを「国の根幹をなす農産物」として位置づけ、これらの農業を手厚く保護してきました。そのひとつが70年から始まった「減反政策」です。農家の暮らしを守るため、政府が毎年、コメの価格が下がらないように生産量を調整してきたのです。こうした保護政策が農家の競争力を妨げているとの声もありますが、コメの価格が下がれば農業をやめる人が増えてしまうため、農業団体は減反廃止に反対。こうした団体の支援を受ける国会議員も「重要5項目」を関税撤廃の例外にすべきと強く主張しているのです。 では、重要5項目はなぜ「重要」とされているのでしょうか。