丘みどりが過酷な生活にも負けず叶えた夢と30歳での上京物語「ずいぶん時間がかかってごめんね」祖母に伝えた想い
着物で歌うという夢は叶ったが…
それでも、毎日毎日、1日に数カ所を回る日々は過酷だった。新幹線で故郷の姫路を通るときに「今、ここで降りたら、明日から楽になれる」と思ったことも、1度や2度ではなかったという。 しかし「きれいな着物で紅白歌合戦に出る」という夢が、彼女の足を止めた。 「祖母が望んだ、着物で歌うという夢が叶ったのは、東京に来て2年目の『新・BS日本のうた』でした」 しかし、東京の事務所に移ってからも、ミニやヘソ出しではないもののドレスで歌ってきた丘には、着物での所作がまったく身についていなかった。 「日本舞踊の舞踊家で振付師でもある花柳糸之先生に、着物での歩き方から指導していただくと共に歌の主人公になりきって歌うことを教えていただきました」 きれいな着物を着て、歌の主人公になりきって歌う――――。 丘みどりの魅力は、固いつぼみが開いて大輪の花が咲くように、見る人、聴く人をとりこにした。 そして2017年、念願のNHK紅白歌合戦への出場を果たす。 「祖母に“ずいぶん時間がかかってごめんね”と言いました」 以来、バラエティやトーク番組に出演するときも、着物を着続けてきた。祖母の嬉しそうな笑顔を胸に抱いて……。 丘みどり(おか みどり) 1984年7月26日生まれ。兵庫県姫路市出身。11歳から数々の民謡コンクールで優勝。2002年にアイドルデビューするが、演歌歌手への夢を追い求めて2005年に『おけさ渡り鳥』で演歌歌手としてデビュー。2016年に第9回日本作曲家協会音楽祭「奨励賞」、第49回日本作詩大賞「優秀作品賞」を受賞し、2017年から3年連続でNHK紅白歌合戦に出場。2024年12月25日にオリジナル曲とカバー曲を収録したアルバム『JOURNEY』をリリース。 工藤菊香
工藤菊香