ファイル共有ソフト「ビットトレント」は便利だがリスクも、なぜここにきて利用に伴う損害賠償請求が増えているのか
ビットトレントをインストールする人は、ビットトレントを使って特定のファイルをダウンロードして視聴を楽しむことが目的であり、別の人に特定のピースを提供しようとは思っていない人が多数だと思います。 ですが、ビットトレントが上記の仕組みである以上、ビットトレントを使って特定のファイルのダウンロードをすると、ビットトレントの起動中、そのファイルのアップロードもしていることになります。 ■なぜ急に損害賠償請求が増えたのか
ビットトレントは2003年にリリースされたソフトです。なぜここにきてビットトレント利用について損害賠償請求が増えたのか? という疑問が出てきますよね。 著作権侵害で損害賠償請求をするためには、著作権侵害をした人が誰なのかを特定する必要があります。ビットトレントではユーザーの氏名住所が表示されるわけではないので、著作権者からすると、以前は、著作権侵害をした人を特定するためのハードルが高かったといえます。
しかし、近年は技術の向上により、特殊なソフトを使って、ビットトレントにおける特定のファイルの提供者のIPアドレス、ポート番号、発信時刻(タイムスタンプ)を記録することができるようになっています。 そして、これらの情報を元に、著作権者が該当のIPアドレスを管理しているプロバイダーに対して「発信者情報開示請求」を行うことで、著作権侵害をした人の氏名や住所を把握することが可能となっています。 また、2022年のプロバイダ責任制限法の改正により発信者情報開示命令手続が新設され、以前より早期に発信者を特定できるようになった、という事情もあると思われます。
著作権者から発信者情報開示請求をされたことは、どうやってわかるのでしょうか。 自分(または同居の家族)がインターネット接続サービス契約をしているプロバイダー(ソフトバンク、KDDI、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ等のプロバイダー)から、「発信者情報の開示等に係る意見照会書」が届く、というのが通常のパターンになります。 この意見照会書には、「あなたが発信した情報の流通により権利が侵害されたと主張する方が当社に対して発信者情報開示を求めてきたため、開示に応じてよいか、ご意見を照会します」という内容が書かれています。届いた人はプロバイダーに対し、開示に同意するかしないかを記載した書類を返送することになります。