投資家が現金に代わるものとして注目すべき3つの選択肢(海外)
アメリカで金利が低下する中、投資家は現金以外から得られるリターンの減少に直面している。 MMFは低リスクである程度の利回りを確保できる商品だが、S&P500には及ばなかった。 ドル不安とインフレ圧力の中、米国債、ゴールド(金)、ビットコインが現金の代替品として浮上している。 ほんの1年前まで、株式市場が不安定になったり、リスクをはらんだりすると、投資家はポジション(未決済の約定)を少し減らして、利回りが5%をわずかに上回るMMF(マネー・マーケット・ファンド:主に短期金融商品で運用される投資信託)に資金を移すことができた。このようなファンドは流動性が高く、現金の代替手段として利用されてきた。 現在、現金の代替商品の利回りはわずかに低下しているが、それでも4.5%近くかそれを上回る水準を維持しており、リスクを取らずに得られる利回りとしては魅力的だ。しかし、アメリカでの利下げサイクルが進むにつれて、傍観しながら投資機会をうかがうメリットは薄れ、投資家は戦略を見直す必要が出てくるだろう。 金融サービス会社シーバート(Siebert)のマーク・マレック(Mark Malek)CIO(最高投資責任者)によると、低リスクでそれなりの利回りを得られる商品は、一見お得なようだが、それが不利に働いた面もあるという。特に、流動性を必要としなかったにもかかわらず現金を保持した投資家は、S&P500種にとって好調だった年を逃してしまった。マレックは以下のように述べている。 「これを言うと少し物議を醸すかもしれないが、短期金融市場の利回りがほぼゼロのときには、それについてあまり議論することがなかった。投資家にとって他の選択肢がなかったため、彼らは株式や最良だと思われた債券に投資してきた。だがこのときは株式を中心に投資すべきだった。そうすれば大きなリターンが得られただろう」 投資家にとっての短期金融市場のメリットは、第1に現金にアクセスしやすいこと(流動性の高さ)、第2に低リスクであること、第3にそれなりの利回りがあることだ。前者は他で代替することが難しいが、後者2つに関しては短期、中期、長期の米国債からも得られるメリットだとマレックは指摘する。特に短期国債への投資であれば、流動性へのニーズも満たすことができる。 「ここで話の流れが変わってくる」とマレックは言う。 「3カ月物の米国債に投資はできるが、もっと長期で保有したくなるかもしれない」 だがマレックは、流動性を求める顧客に、満期が2年以上の商品を勧めることは決してない。 そもそもイールドカーブ(利回り曲線)は右下がり(短期金利が長期金利よりも高くなっている状態。逆イールド)になっており、期間プレミアム(保有期間の長さに対する上乗せ利回り)は存在しない。最も高い利回りは1カ月から6カ月物の米国債から得られる。 マレックは、流動性に対するニーズを見極めた上で、短期国債に投資するか、発行から一定期間が経過し、満期が近づいている古い債券を探すことが重要だとアドバイスした。 短期の債券に投資する際の主な課題はロールオーバーリスクだ。これは、現在の米国債が満期を迎えた際に、期待していたよりも低い利回りしか得られない可能性があることをいう。即座に現金化する必要がない投資家に対して、マレックは利回り4.5%の6カ月物を勧めている。それが満期になるころには、アメリカ連邦準備理事会(FRB)が75ベーシスポイントの利下げをしていると予想されるからだ。現金化する必要性が生じた際に、FRBの利下げサイクルが予想以上に進んでいれば、売却して利益を得られるかもしれない。 多少のリスクを取ることができ、5%を超える利回りを維持したい投資家は、格付けがAAAからBBの社債への投資を検討した方がいいとマレックは述べている。
Laila Maidan