製作中に警察が来た!? リアル過ぎた1/1戦車プラモデルとは?『ガールズ&パンツァー』だけじゃない『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』の手作り戦車
制作期間は約2年……さまざまな困難を乗り越え本物そっくりの戦車が完成
プラモデルを元に採寸して35倍に拡大。さらにそれを元に図面を描き、動力や履帯構造の検討を経て、工場の設備を借りて製作作業を本格的にスタートしたのは2012年2月のこと。まずはボディ下半分のバスタブ構造から製作を始め、続いて履帯や転輪などの足回りを製作。同年5月の静岡ホビーショー合同作品展にて完成した車体下部を展示した。 そこから再度レイアウトを検討し、中古で購入したヤンマー製の乗用コンバインからエンジンと変速機を取り出して装備。操縦系を組み込んで同年9月に試運転成功までこぎつけた。2013年から操縦席を実車と同じ構造で制作し、車体上部の製作や艤装を行い、同年5月の静岡ホビーショー合同作品展ではカタチとなったヴィーゼルを展示した。同じ月にテレビ朝日『ナニコレ珍百景』でガソリンスタンドで給油するヴィーゼルの姿がオンエアされて話題となる。 静岡ホビーショー後にミサイルボックスとランチャーの製作に着手し、ランチャー基部に駆動機構を組み込んだことで、実車と同様にランチャーの旋回+仰角・俯角の操作がリモコンで可能になった。 ほぼ完成形となったヴィーゼルは、同年7月のワンダーフェスティバルで展示された。そして、2014年春に塗装を現在のNATO迷彩に改め、後部の衆望ボックスを制作して完成。この年の静岡ホビーショー合同作品展でお披露目となり、同年秋のあんこうまつりにも初出展した。 1/1スケールの戦車模型のパイオニアとなった大橋さんに、製作でもっとも苦労した箇所がどこだったか尋ねると「やはり履帯でしたね」との答えが返ってきた。 ヴィーゼルの履帯はダブルピン構造となるので、履帯・シャフト・エンドコネクターの組み合わせで成り立っている。大橋さんのヴィーゼルの重量は1.9tと本物に比べて半分くらいの重さしかないが、それでもこれだけの重量を支え、なおかつ駆動させるには履帯には相当な負荷がかかる。当初は鋳造での製作も考えたそうだが費用の問題で断念。鉄板を折り曲げて1枚1枚板金作業で履帯板を制作し、それに鉄パイプのシャフトを通して別途制作したエンドコネクターで連結させることにした。 履帯に開けられた穴が大きすぎてはエンドコネクターを固定できず、小さすぎてはシャフトを通すことができない。精度が求められる大量の履帯板を製作するのは地道で気の遠くなる作業だが、大橋さんは仲間のみならず家族の協力を得て、必要な130枚の履帯板を製作したという。 さらに驚かされるのは履帯板に取り付けられたゴムパッドだ。戦車などの装軌車両には滑り止めと舗装路面の保護のために履帯板にゴムパッドが装着されることが多く、ヴィーゼルにももちろん装着されている。大橋さんは南里製作所の協力のもと、加硫接着(硬化前のペースト状のゴムを型に流し込み、熱を加えて硬化・接着すること)で製作しているのだ。 製作中のエピソードでほかに印象深かったことを聞くと、地元警察の刑事が近隣から匿名の通報を受けて作業現場を訪れたことを挙げていた。事情を説明して1/1スケールの模型であり、本物の戦車のような攻撃力がないことを説明すると、怪訝な表情を浮かべつつもなんとか納得して帰っていったそうだ。 こうしてさまざまな苦労を経て完成したヴィーゼルを目の前にすると、思わず感嘆の声を漏らし、その迫力に圧倒されてしまうほどだ。『ガルパン』のオンエア後の戦車ブームによって、日照戦車を始めとした実物大戦車模型を作るフォロワーが誕生したのも、先駆者である大橋さんら『プラモデルを1/1で作る会』によって完成したヴィーゼルがあればこそだ。 すでに完成から10年が経過した空挺戦闘車であるが、その存在感と価値は全く色褪せることがなく、『大洗春まつり 海楽フェスタ2024』に訪れた人を楽しませていた。
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