来日で驚愕した野球文化「米国にはいない」 夢を追う29歳が衝撃を受けた“違い”
ウィリアムズ・ケン投手は「ジャパンウィンターリーグ」に参加する
「日本でプレーすることが夢でした」。流暢な日本語で語るのは「ジャパンウィンターリーグ」にカナダのIBLリーグから参加しているウィリアムズ・ケン投手だ。日本に憧れを持って来日した29歳には、米国と日本の違いが衝撃的だったという。 【画像】日本人メジャーリーガー妻が大開脚で大胆ポーズ「きれいすぎ」 手元で動く直球を武器にウィンターリーグでアピールを続けるウィリアムズ。日本人の母とアメリカ人の父を持ち、アメリカで生まれ育ったが、母と日本語で話したり、高校1年まではシアトルの日本語補習学校へ通ったりすることで日本語を覚えた。さらに子どもの頃には年に1回、母の地元である奈良県へ訪れ、甲子園など日本の野球を見て育ってきた。 「日本で野球をやるのがずっと夢だったんです。野球を知った3歳ぐらいの時から日本でプレーしたいと思っていました。高校野球を日本でやってみたかったですね」 高校野球の夢は叶わなかったが、プロを目指しアメリカで努力を続けた。高校卒業後は北米独立リーグで、カナダのオタワを本拠地とする「オタワ・タイタンズ」に所属。MLBの夢を追いかける傍ら、チームメートの日本人選手の通訳も兼任した。また、シートノックを打つ事もあればブルペン捕手を担当する日もあった。さらにはクラブハウスマネジャーが辞めたタイミングでは洗濯や掃除までも担当していた。 大忙しの野球生活だった。「もちろん、目標は投手としての活躍です。でも、投手はチームの中で12人いて、マウンドに立つのは1人だけ。試合をしていない時間の方が長いので、他の活躍も大事かなって思いながらずっとやっているんですよ。チームをどんな面でもいいから支えていきたいので」と献身的な所は日本人の母譲りだという。
来日で驚いた“野球”と“ベースボール”の違い
しかし昨年、「オタワ・タイタンズ」から戦力外を通告されてからは、カナダのIBLリーグでプレーを続けている。そんな時、突然「ジャパンウィンターリーグ」参加のチャンスが舞い込んできた。偶然、投手コーチとして行くはずだった人がキャンセルとなり、日本語も話せるウィリアムズに白羽の矢が立った。「最初は選手じゃなくてコーチや通訳として呼ばれたんです。でも投手もやらせてくれるなら行きますとお願いをして……」。せっかく訪れたチャンスを無駄にはしたくなかった。 「NPBはMLBの次にレベルの高いリーグ。アメリカでは3Aの上のリーグという意味で4Aと呼んだりする事もあります。だからみんな目指す舞台のひとつなんです」 大きなチャンスを目の前に、結果を出したいが米国との違いに驚くことも多い。「日本とアメリカの野球は全然違いますね。日本は打てなくても、ファウルで球数を稼ごうとする。チームのためにそこまでする選手はアメリカにほとんどいません。そういった打者にどう投げればいいか考えるのは難しいです」。 さらに「凡退した時でも全力で走り抜ける姿勢はアメリカより徹底されています。アメリカでも良くないとされてはいますが、ある程度はよしとされます。でも日本で全力疾走しなかったらアウト。どれだけプレーが良くてもそういった部分をしっかり出来ないと次はないと教えてもらいました」。さらにベンチの掃除やゴミの分別などまできっちり教え込まれる。日本と米国の違いに驚愕の連続だった。 そんな違いを知ることもこのリーグの醍醐味だ。選手たちも日本のチームに入る前に独自文化を知ることができ、スカウトにとっても、日本のチームや文化にフィットできる選手なのかを見分けることが出来る。母国とは違う当たり前を知り、日本文化を学ぶ場に「めちゃくちゃいいと思います。野球や施設への感謝の心を持てるので」と笑顔だ。異国の文化に戸惑いながらも、日本で野球選手になるという夢が目の前まで迫っている。
木村竜也 / Tatsuya Kimura