「たかが豆腐、されど豆腐」亡き父の言葉を胸に豆腐に新たな可能性を見出す5代目の挑戦
福島県内で長く愛されている老舗の今に迫る「老舗物語」。今回取り上げるのは、棚倉町で創業123年になる町の豆腐屋さんです。亡き父の言葉を胸に豆腐に新たな可能性を見出す5代目の挑戦です。 【写真を見る】「たかが豆腐、されど豆腐」亡き父の言葉を胸に豆腐に新たな可能性を見出す5代目の挑戦 棚倉町にある大椙(おおすぎ)食品。今年、創業123年を迎えます。 店を営むのは、5代目の大椙広さん、40歳。 --大椙広さん(大椙食品)「月・水・金が基本的に製造日で、朝の3時くらいから起きて製造していますね。鮮度の良いものを提供するには、朝早く起きて作るのが一番かなと。」 店の自慢は、伝統の木綿豆腐。多くの店で機械化が進む中、大椙食品は創業当時から変わらない手作りの製法にこだわっています。 --大椙さん「豆腐の水抜けが悪くなったり固すぎたりバラつきが出るので、ここを間違えると一釜が終わりになる。」 作る豆腐は、1日1000丁あまり。大量生産できない分、質にこだわってきました。 家業を継いだのは、9年前の2015年。当時は不安を抱いての船出でした。 --大椙さん「売り上げも相当厳しくて、今の3分の1くらいで大丈夫かなという状態でした。」 大学卒業後に県内の百貨店に就職した大椙さん。先代で父・守(まもる)さんが体調を崩したことをきっかけに実家に戻りました。 --大椙さん「当時父も仕事ができなかったというのもあって、母とパート従業員一人で厳しい状況だった。」 厳しい経営状況に、家業を継いだことを後悔したことも。しかし翌年、転機が訪れます。それが「青豆寄せ豆腐(400円・工場直売価格)」。2016年に行われた全国豆腐品評会で東北一に輝きました。国産の青豆を使った豆腐は、豆本来の濃厚な甘さが口いっぱいに広がり、一躍、店の看板商品に。 当時、大椙さんはこの快挙に驚きを隠せませんでした。 --大椙さん「おいしいとは思っていましたがまさか、東北最優秀賞をいただけるとは思わなかった。」 これを機に店を軌道に乗せますが、2017年、父・守(まもる)さんがこの世を去ります。生前に守さんが話した“ある言葉”が自身の原動力になっていました。