「科捜研の男」博士号を取得 DNA型鑑定研究した熊本県警・興梠さん 「技術を高め捜査に貢献」
熊本県警科学捜査研究所（科捜研）法医係の興梠聖哉さん（40）＝熊本市＝が、DNA型鑑定に不可欠な技術の高度化に関する学位論文で、九州大大学院から農学博士の学位を取得した。県警の科捜研に配属後の博士号取得は8年ぶり。 興梠さんは九州大大学院の修士課程で遺伝子工学を専攻。宮崎県延岡市職員を経て2015年、科捜研勤務の夢を追って熊本県警職員に転身した。念願かなって科捜研に配属後は、犯罪捜査や身元特定に欠かせないDNA型鑑定業務などに従事している。 鑑定では、唾液や血痕などの試料から取り出したDNAをPCR法と呼ばれる手法を用いて増幅した後、分析機で個人を特定する。ただ、PCR法は用いる酵素ごとに反応条件がさまざまで、温度や時間によって分析結果が変わるため、改善の余地があった。 興梠さんは、PCR法で重要な役割を果たす「DNAポリメラーゼ」という酵素の中に、熱に強い酵素があることを見つけ、活用を試みて有効性を確認した。今後、研究が進めば、混合試料の場合に正確な判定が難しくなるといった鑑定技術の問題を解決できる可能性があるという。
日常業務と並行して研究に力を注ぎ、約6年半かけて博士号を取得した。「研究を通して将来につながる知見を得られた。DNA型鑑定の技術や証拠としての価値をもっと高め、県警の捜査に貢献していきたい」と表情を引き締めた。（松冨浩之）
