【高校サッカー選手権】浦和学院、延長戦の末に大宮南を下し8強入り
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選は10月26日、埼玉スタジアム第2グラウンドなどで3回戦8試合が行われ、ベスト8が決まった。インターハイ(総体)予選4強の浦和学院は大宮南との延長戦を1-0で制し、11月3日の準々決勝で前回大会ベスト4の武南と対戦することになった。 【フォトギャラリー】 浦和学院 vs 大宮南 ともに県2部(S2A)リーグに所属し、対戦成績は現在2位の浦和学院が、8位の大宮南に2連勝している。 両チームとも3バックでスタートし、守備陣とボランチが堅実な対応をして相手の進入を防御し、クロスやハイボールを確実に跳ね返す応酬が続いた。 浦和学院は左ウイングの佐藤大心(3年)が、左サイドから何度も1対1の仕掛けに挑んでは敵陣を深くえぐった。主将でトップ下の平瀬優真(3年)はしっかりと戦況を見極め、ボールを丁寧につなぎながら縦パスを入れる準備をした。しかしボールを握る回数では相手を上回っていたが、前半は崩しの形に持ち込めず、シュートは1本もなかった。 リーグ戦の雪辱を期する大宮南は、石井恭翔(3年)が中列後方から攻撃のかじを取り、長いパスと外からのアタックでゴールを狙った。前半5分、右ウイングバックの武田悠希(3年)が右から好クロスを上げたが、1トップの髙橋煌汰(3年)の頭にわずかに届かなかった。大宮南も浦和学院と同じく、1本のシュートも打てずに前半を終了した。 後半に入るとさすがに互いの攻めもいくらか活発になった。 浦和学院は後半開始からFW橋本秀太(3年)を送り込んだ。総体予選までレギュラーだったが、7月に右足を手術したため、合流が今大会1週間前になった切り札だ。 その橋本が5分、佐藤の折り返しがこぼれ球となり、素早く回収して決定的なシュートを打ったが惜しくもバーを通過する。35分には橋本が投じた右ロングスローをCB秋澤聖(3年)がヘッドで合わせたが、これも枠を捕らえられなかった。 大宮南は38分、後半20分に投入されたMF吉松空音(2年)が、後方からの絶好球を上手にミート。この日最大のビッグチャンスとなったが、GK岡本悠汰(3年)の好守に阻まれ得点できなかった。この1分後にはFW黒木隆成の左ロングスローから、MF野原俊汰(ともに3年)が右足で打ったが、これも左ポストの横をかすめていった。 0-0で80分を終え、延長戦にもつれ込んだのだが、持久戦は大宮南にとってはお手のものだ。 川越南との1回戦は0-0から延長後半に4得点し、浦和北との2回戦でも0-0から延長後半に2点を奪った。5人で計6ゴール。どこからでも取れる強みも持ち合わせていたのだが……。 延長前半はともに無得点。もうすぐPK戦突入かという後半8分、浦和学院が決勝点を挙げた。 橋本が左からロングスロー。FW宮本翔(3年)を経由し、遠いポストにいた身長165センチのCB御武内龍吾(3年)が、ヘディングで191センチのGK磯野志政(3年)の脇を破った。 ヒーローは「PK戦も頭をよぎる難しい試合だったので、決まった瞬間はもううれしくて仕方なかった。準々決勝も全員の力を合わせて勝ち切りたい」と力こぶを入れた。 今春、コーチから指揮官に就任した川上耕平監督も激闘を制し、安堵と喜びの表情が入れ交っていた。「リーグ戦でも対戦し、手の内を研究されているのでやりにくかったですね。攻撃は消極的で自分たちらしくなかったし、天然芝にも慣れていなかった」と述べ、この言葉からも苦しい1戦だったことがうかがえる。 次は武南との戦いだが、川上監督は「ボールを動かしながら攻めるという、これまで積み上げてきたものを出したい」と総体予選に続く準決勝進出に思いをはせた。ロングスローと縦への突破で脅威になった橋本は、「今日は流れを変えることを心掛けたが、次はゴールで勝利に貢献したい」と意気込んだ。 わずかな差で8年ぶりのベスト8を逃した大宮南の田中龍太郎監督は、「守りは良かったが、点の取り方に少し工夫が足りなかったですね」と敗因のひとつを挙げ、短い言葉の中に悔しさをにじませた。 (文・写真=河野正)