<サッカー>U-22代表はリオ五輪最終予選を勝ち抜けるか?
一方で、守備における安定感は増してきている。カタール・UAE遠征での2試合を通じて、GKが大活躍するような決定的なピンチを迎えることはほとんどなく、球際での寄せの厳しさ、セカンドボールへの執着心も強まっている。守備陣を束ねる岩波拓也(ヴィッセル神戸)のコーチングの声や檄が響きわたり、試合中に選手同士で声を掛け合う姿も目についた。 「練習から声が出るようになってきたし、後ろの声で前の選手を動かせるようになってきた」とキャプテンでボランチの遠藤航(湘南ベルマーレ)も言うように、守備の完成度は高まってきた。 むしろ、不安要素は、得点力やチーム作りの進捗度ではなく、準備機会の少なさだ。 今年7月にU-22コスタリカ代表と親善試合を戦って以降、U-22イエメン戦、U-22ウズベキスタン戦までテストマッチは組まれず、前述したようにJクラブや大学との練習試合にとどまった。 また、代表での活動においても「チャンピオンシップに進出したチームからは招集しない」「クラブワールドカップに出場するチームからは招集しない」「各クラブから原則1名」というように、常に招集制限がある状況で、ベストメンバーで連係を深める機会がほとんどなかった。 攻撃陣の核として期待される久保と南野も、昨年 12月のタイ・バングラディシュ遠征と今年3月の1次予選にしか合流できていない。国際Aマッチデーに海外遠征を組めば、彼らを招集することもできたはずだが、今年はそうした機会がないまま最終予選を迎えようとしている。
もうひとつの不安材料が、予選方式の変更である。 北京五輪、ロンドン五輪と2大会続けてホーム&アウェー方式で開催されてきたアジア最終予選が、今回は16チームがカタールに集まって争うセントラル方式に変更された。 ホーム&アウェー方式であれば、選手を毎試合入れ替えられるため、その時々で調子の良い選手を呼ぶことができ、対戦相手や戦術によって選手を入れ替えることもできる。仮に初戦を落としたり、ライバルチームとのアウェー戦に負けたりしても、リーグ戦だから挽回する機会が残されている。 一方、 1か国に集まり、トーナメント戦を行なわれるセントラル方式ではそうはいかない。初戦で躓くと悪い流れを取り戻すのは簡単ではなく、選手を入れ替えることも不可能で、試合間隔も詰まっている。また、どこにピークを持ってくるかも難しく、グループリーグにピークを持ってきて、準々決勝や準決勝で負けてしまっては意味がない。 しかも今回は、カタールのドーハで開催される。直前合宿も含め、1か月近く中東で生活しなければならず、その間、できるだけストレスをためこまない生活を送りながら、トレーニング、試合、リカバリーのサイクルを作っていかなければならない。中2日の試合間隔で進んでいくため、選手のコンディション、パフォーマンスは次第に落ちていく。それをどれだけ落とさずにいられるか、キープできるかの戦いになる。それには環境や気候、ピッチ状態についてシミュレートしておくことが大事になる。 先日の遠征ではドーハの気温は20度を下回り、寒いぐらいだった。だが現地の情報ではここまで寒くなるのは珍しく、1月はもっと温かいという。もっとも一度真冬の日本に帰国するわけだから、12月下旬の石垣島合宿で暑さに慣れることが重要となる。