実力校対決は上尾が東農大三を振り切る! 【24年秋・埼玉県地区予選】
<秋季埼玉県高等学校野球大会 東部地区予選:上尾12-9東農大三>7日◇地区代表決定戦◇UD上尾球場(上尾市民球場) 【動画】批判も糧に挑戦続ける33歳の青年監督。今春からは異例のチャレンジへ... 上尾と東農大三と北部地区の実力校同士の対決が地区予選の代表決定戦で実現した。 まず上尾は北部地区の新人戦でベスト4入りしており、地区予選のシードを得た。対する東農大三は強打がウリの東農大三だ。この両校は3週間前、新人戦初戦で激突しており、上尾が12対5の8回コールドで勝利している。敗れた東農大三は12安打を記録している。 先発は上尾が前回同様にエースの右腕・渡邉冬雅(2年)、一方の東農大三は前回と登板の順番を入れ替え右サイドの1年生右腕・秋葉赳が登板し試合が始まる。 試合は序盤から激しく動く。 東農大三は初回、一死から2番・小柳克樹(2年)が相手送球エラーで出塁し一死二塁とすると、その後二死三塁から相手のワイルドピッチで1点を先制する。 だが上尾も2回表、すぐに反撃開始。この回先頭、岡田脩杜(2年)のレフト越え二塁打を着火剤とし、7番・渡邉光希(2年)、1番・石田空(2年)、皆川輝生(2年)の3長短打に四死球を絡めあっという間に4点を奪い逆転する。 その後前回先発した東農大三の2番手左腕・手塚琳太郎(1年)に対しても上尾は攻撃の手を緩めず、4番・平山道悠(2年)、5番・岡田の連打でさらに3点を追加するなど上尾打線が爆発。この回一挙7点を奪うビッグイニングを作る。 本来はこの7点で試合の大勢が決するのだが、この両校の対決は簡単に終わらない。 東農大三は3回裏、この回先頭の濱野柊太(2年)の四球を足がかりとし、1番・白川大智(2年)、2番・小柳、4番・畑真守(1年)の3長短打で2点を返す。 一方の上尾も4回表すぐに1番・石田のヒットを足がかりとし、3番・皆川、5番・岡田、7番・渡邉光の3長短打で3点を追加し10対3とする。 とにかく諦めない東農大三は5回裏、4回途中からマウンドに上がった皆川に襲いかかる。1番・白川、2番・小柳、3番・木村の3連打で無死満塁とすると、ここでマウンドに上がった3番手・市川歩夢(1年)に対し、内野ゴロや5番・東條雷士(2年)、6番・山田夏生(2年)の連打などで4点を返し10対7、一気に3点差とする。 ここからは総力戦になる。両チーム必死の継投で最小失点に凌ぎ、両校6回、7回と共に1点ずつ追加し12対9とする。 その後、7回に登板した東農大三の5番手・川端輝樹(2年)、上尾の4番手・小野雄二郎(2年)、共に右サイドの投手だが彼らが登板しようやく試合が落ち着く。 粘る東農大三は最終回、この回先頭の山田のヒットと続く柳本健翔(2年)の死球で無死一、二塁とするが、8番・濱野は送れず併殺に倒れ万事休す。 結局、上尾が粘る東農大三を振り切り、両校合わせて32安打の壮絶な打撃戦を制し県大会出場を決めた。 まずは東農大三、上尾を上回る19安打を放ちながらの敗戦はリベンジを狙っていただけに痛恨であろう。 「打撃は新人戦の上尾戦で自信がついたかなと。チーム状況的に点を取らないと厳しいと生徒達は腹を括ってバットを出してくれたかなと。7点取られた段階で終盤勝負できるように1点ずつ返していこうと言っていたんですが喰らいついてくれました。できれば2年生に出てきて欲しいがとにかく誰かが一本立ちできるよう春までに投手陣が課題です」(髙廣監督) これは単純に投手力の弱さが原因である。色々なバリエーションに富む複数投手はいるが、とにかくゲームを作れて柱になれる投手がいない。旧チームの加藤や長島という柱が抜けたが、それでも今夏を経験した小柳、畑、山田などがチームを引っ張り、打線としては現状、埼玉有数の強力布陣だけに、一刻も早い整備が求められる。場合によっては来春、新1年生が登板することも考えられる。 一方の上尾、旧チームは好左腕・飯島恒太(3年)、4番打者でありながら145キロ右腕の藤村美輝(3年)、好捕手屋代剛志(3年)などが揃った大型チームであっただけに、彼らが抜け不安視されていたが、新チームも旧チームのレギュラーであった皆川を中心とし現状打撃は好調を維持している。問題は投手陣だ。今年の布陣を見ていると皆川が登板しないと厳しい状況なのだが、頼みの皆川がピリッとしない。 「まさかまた同じ山に来るとは。打撃が良いのはわかっていたので今日はある程度、覚悟をしていた。新人戦で勝っている分、うちが受け身になると終わるぞと伝えた。10対3になっても諦めないし、しぶとさ、振りの鋭さや集中力は参考になった。渡邉冬や皆川を軸に考えていたんですが今のままだと厳しい。市川や小野の方がよっぽど良い球を投げていた。皆川はガンで見ると一番速い球を投げるんだけどまだ”野手ボール”でひと伸びがない。そこを県までに整備します。まあ、失敗を積み重ねながらですね」(高野監督) 「自分達の今の力と相手を見ると差がないのは事実なので。もちろん、主戦で投げることに対し、覚悟を持ってやってきたんですがまだ甘い。変化球に苦手意識があるので。打撃はもちろん、守備での失点も多いので県までに投球も含めやるべきことをやって修正したい」(皆川)と、高野監督、皆川共に修正点は明確だ。もちろん相手の打線のことを差し引いてみないといけないが、彼が投打の中心であることは疑いの余地がない。それだけに県大会までに彼を含めた投手陣の整備はマストであろう。 今年の埼玉は上尾・皆川の他に、山村学園・横田蒼和(2年)、昌平・櫻井ユウヤ(2年)、花咲徳栄・田島蓮夢(2年)など主戦で投げるかどうかは別として、中心打者である彼らも投手陣として計算に入っている。その中で彼らの誰が”投手”として柱になるのか、それとも登板の機会がなくなるのか。彼らの今後にも注視していきたい。