「ガンバ大阪の10年後のために何ができるのか」――パナソニックスポーツ・久保田剛社長インタビュー
競技で勝つことが第一義
――パナソニック スポーツの運営はアメリカのスポーツ投資会社である「フェンウェイ・スポーツ・グループ」(以下、FSG)を参考にしていると聞きました。 「日本には我々のような企業はないので、比較的思考が似ているという点ではFSGを参考にしている部分はあります。今夏にFSGの方々に会いにアメリカに行ってきたのですが、(FSGが所有する)リバプールとレッドソックスを同じノウハウで経営せずに、それぞれの競技を尊重しながら支援する姿勢には共感しました。各チームのノウハウは見える化しつつも、成功例を押し付けるのではなく、参考情報として共有する。効率化を重視することが常に良い結果を生むとは思っていません」 ――パナソニック スポーツの運営はMCO(マルチ・クラブ・オーナーシップ)にも近しい部分があるのではないかと見ています。例えば、シティ・フットボール・グループでは、各国にいる営業担当がグループ内の複数クラブを組み合わせて企業にパートナーシップの提案するようなことも行われています。 「FSGでも同じようなアプローチが行われていると聞きました。パナソニック スポーツでも今後そうした活動を行う可能性はありますが、あくまでニーズがあればの話ですね。例えば、ワイルドナイツのホームタウンは埼玉県で、ガンバ大阪よりも浦和レッズの方が親和性は高い。各企業が必ずしも複数の競技(チーム)で露出が増えることを喜んでくれる訳ではないと考えています」 ――リソースの共有という観点で、今後グループ間の人的交流が促進される可能性はあるのでしょうか? 「それは考えています。これから事業化がより進むであろうパナソニックパンサーズの社員がガンバ大阪で勉強してもらうとか、1回本社(パナソニック スポーツ)の業務経験を積んでもらってチームに戻るとか。ずっと同じ組織にいると考え方がどうしても硬直化してしまうところもあるでしょうから、違う経験をしてもらうという意味もあります」 ――「事業化」という言葉が出ましたが、パナソニック スポーツが各チームにアプローチする領域は競技面ではなく、事業面という理解で正しいですか? 「はい。ただ、『事業化=収益』ではなく、ガンバ大阪であれば、アジア、世界で勝つこと、Jリーグで常に優勝争いに絡むことも含まれています。競技で勝つことが第一義としてあって、それを維持するために収益が必要という考え方です。強くて魅力のあるチームであることが、我々の最大の価値なので。債務超過になるのはダメですが、利益をいくら上げても勝たなければ評価されません。それがスポーツの世界です」