センバツ2024 1回戦 敦賀気比、一歩及ばず 先発竹下、粘り強く146球 /福井
阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれている第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は第2日の19日、1回戦で敦賀気比(福井)が明豊(大分)と接戦を演じたものの、0―1でサヨナラ負けした。春の甲子園は4年連続で初戦敗退となり、8年ぶりの勝利に届かなかった。それでも最後まで粘り強くプレーした選手たちに、スタンドから大きな拍手が送られた。【中田博維、武市智菜実、野原寛史】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 0―0で迎えた九回裏2死一、二塁のピンチ。この回途中から救援の米田涼平(3年)が「緊張はなかった」と投じたストレートだった。相手打者がはじき返した強い打球は二塁手の西口友翔(同)を襲い、右翼手の野道諒彌(同)の前に。「絶対に刺してやる」という野道の好返球もわずかに及ばなかった。 先発は竹下海斗(同)。「話を聞いても落ち着いているし、腹が据わってきた」と父宏志さん(51)が成長を実感しているように、本調子でないながらも146球で交代するまで相手に本塁を踏ませず、粘り続けた。 アルプススタンドのブラスバンドは、助っ人ばかりの20人で懸命に盛り上げた。20日に吹奏楽部が定期演奏会を控えており、現役部員だけでなくOBの大半も欠席に。そのため3人のOBに加えて、敦賀市の吹奏楽連盟やOBの親戚にも声を掛けての急造チームで、この日が初顔合わせだった。同校を運営する嶺南学園の宇野晃成理事長(63)は自らチューバを演奏し、指揮の岸本光隆教諭(59)も「一つになって部員の背中を押したい」と願ったが、打線が応えられない展開が続いた。 2安打と1四球でチャンスを作った1番・岡部飛雄馬(2年)の父烈雄(れお)さん(42)も緊迫した展開に「息子より、自分の方が緊張しているかもしれない」と先制点を祈ったが、チームは計4安打に抑えられ、本塁が遠かった。打線の援護に恵まれなかった竹下だが、「自分の投球のテンポが悪く、打者に流れを持っていけなかった」と仲間を気遣った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇「全国大会一家」悔しさ残し 中森昂捕手(3年) 八回まで得点圏に走者を背負うこと6回。いつもの調子ではないエース竹下海斗(3年)を捕手として懸命にリードした。「立ち上がりからストレートが伸びてこなかった。なので緩急で打者を崩すことを意識した」。六回はフェンス間際の難しい邪飛を好捕し、竹下をもり立てた。 昨秋の北信越大会で6番だった打順は5番に上がり、七回は投手を強襲する内野安打。「最近は打撃も良くなってきた。(安打も)悪くなかった」と甲子園初安打を振り返ったが、「竹下が頑張っていたのに。試合に勝てなかったので……」とサヨナラ負けに肩を落とした。 昨春センバツも初戦の大阪桐蔭戦で竹下と2年生バッテリーを組み、接戦に持ち込んだものの惜敗した。競技は違うが、家族が全国大会で活躍しており、「自分の成績が最も低い。昨春に負けたときも家族にいろいろ言われた」と苦笑いする。 母麻里さん(41)はソフトテニスで大学時代に全国制覇を経験。父哲(さとる)さん(43)も同競技で国体ベスト32と活躍した。弟律さん(15)はサッカーのクラブユース選手権などで16強入り。大会前には「弟は追い越したい」と話していたが、「この春は1球で負けてしまった。1球を大切に、また夏に戻ってきたい」と唇をかむ。もちろん最後の甲子園で目指すのは、母に並ぶ全国制覇だ。