トランプ氏の外交・安保人事は「親イスラエル」鮮明…「パレスチナ人など存在しない」と公言した人物も起用
【ワシントン=淵上隆悠】米国のトランプ次期大統領は12日、駐イスラエル大使にマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事(69)を指名した。新政権の外交・安保を担う陣容は、中東政策に「親イスラエル・反イラン」で臨む姿勢を鮮明に示している。
「彼はイスラエルの人々を愛し、イスラエルの人々に愛されている。中東に平和をもたらすため、休むことなく働くだろう」
トランプ氏が12日に発表した声明でこう紹介したハッカビー氏は、2008年と16年の大統領選で共和党の指名候補争いに名を連ねた実力者だ。イスラエルを「神がユダヤ人に与えた土地」と信じるキリスト教福音派の元牧師で、「『パレスチナ人』など存在しない」と公言してきた。国際社会が違法と見なすユダヤ人によるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の入植も容認する立場だ。
トランプ氏の「親イスラエル」の姿勢は、ほかの人事からも明白だ。国連大使に抜てきしたエリス・ステファニク下院議員(40)は、国連が「反ユダヤ主義で腐敗している」として資金拠出の停止を訴えた。国家安全保障担当の大統領補佐官に起用するマイケル・ウォルツ下院議員(50)も、イランからミサイル攻撃を受けたイスラエルの報復措置として、イランの核施設などへの攻撃を主張した。12日には、中東担当の特使に、不動産会社を経営するユダヤ系の富豪で「ゴルフ仲間」でもあるスティーブン・ウィトコフ氏の起用が発表された。
米国は1948年のイスラエル建国以来、党派に関係なく経済・軍事援助を行ってきた。
民主党のバイデン政権も、昨年10月に始まったガザでの戦闘を巡りイスラエルを積極支援した一方、今月5日の大統領選が近づくにつれ、支持層であるアラブ系やリベラルな若者に配慮した対応も見せた。
これに対し、トランプ氏は選挙戦で「イスラエルに仕事を最後までやらせるべきだ」などと語ってきた。第1次政権(2017~21年)ではエルサレムをイスラエルの首都と認めて大使館を移転し、イラン核合意から一方的に離脱した。イスラエルとモロッコなどの国交正常化も仲介した。来年1月に発足する第2次政権でも、トランプ氏がイスラエル寄りの政策を取るのは必至だ。
ただし、トランプ氏は具体策を示さないまま、「すぐに戦争を終わらせる」と訴えてきた。トランプ氏も戦闘の長期化は避けたいのが本音で、イスラエルの地元紙タイムズ・オブ・イスラエルによると、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、自身の大統領就任前に戦闘を終えるよう繰り返し要求しているという。