『嘘解きレトリック』ラスト2分でゾッとする急展開に 不気味な余韻を与える片岡凜の表現力
これまでも昭和初期のレトロな世界観が高く評価されてきた『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)。その世界観の構築に対するスタッフのこだわりは周知の通りだが、第4話の人形屋敷の怪しげでおどろおどろしい雰囲気には、思わず腰を抜かしそうになるほどの迫力があった。キャラクターたちの違和感のなさはいつも通りに、BGMや小道具で演出される、なんとも言葉にしがたい“何かがいそう”な雰囲気にスタッフの本気を感じさせられたのは筆者だけではないだろう。 【写真】良い意味で不気味な雰囲気を醸し出す品子(片岡凜) 第4話では、祝左右馬(鈴鹿央士)と浦部鹿乃子(松本穂香)が、端崎馨(味方良介)の姉で怪談雑誌の記者・雅(北乃きい)に同行し、妙な噂のある人形屋敷と呼ばれる綾尾家の取材を進めていく様子が描かれる。この綾尾家には、一風変わった風習が……。それは、娘の成長とともに一体ずつ人形を作り上げていくというものだった。画面いっぱいに並んだ人形は正直気味が悪い。この風習がいつから始まったのか、細やかな情報やその起源は不明のままだ。 現在、綾尾家を継いでいるのは、品子(片岡凜)という一人娘のみ。彼女は、まるで人形のように整った容姿であるため、「人形屋敷」に住む不思議な少女として噂されるようになっていた。そして、1カ月前に女中のイネ(松浦りょう)が屋敷内で誰かが倒れているのを発見するという出来事があった。慌てたイネは、彼女の面倒を見てくれていた柴田(佐戸井けん太)の家に駆け込み、事態を知らせた直後、岩場から転落し命を落としてしまったのだ。 左右馬たちは品子から話を聞きながら、綾尾家について少しずつ知識を深めていく。現在は品子と数人の女中たちが生活を共にしている状態だが、この「人形屋敷」と呼ばれる風習のせいか、女中たちは長く屋敷に留まることなく、次々と去っていくのが常だった。 さらに、人形屋敷と呼ばれる離れにある品子の部屋には、配膳を除いて他人が立ち入ることは許されていない。その配膳自体も、品子の食事ではなく、人形たちに供えられるものだからだ。品子本人は食事を母屋で取るため、離れの人形用の膳に手をつけることはない。 鹿乃子は品子の「誰も死んでいない」「イネさんは自殺」といった言葉に対し、彼女が嘘をついていることを見抜く。物語のラスト2分で、一転して血を流した人形と「品子と思われる女性」が登場し、視聴者を凍りつかせるような急展開を見せた第4話。これまでとは一味違う本格派ホラーの余韻が漂う結末に、多くの視聴者がゾッとさせられたことだろう。 また、北乃きい演じる雅が人の懐にするりと入り込むキャラクターと対比になるような、心に厚めのバリアをはっている品子の存在も興味深い。演じる片岡凜は、NHK連続テレビ小説『虎に翼』での森口美佐江役と並木美雪役の演じ分けが話題となったことも記憶に新しく、視聴者に強烈なインパクトを与えた俳優である。今作でもその表現力は冴え渡り、人形のような容姿を持つ品子役を通して、視聴者に良い意味で不気味な余韻を与えている。品子が何を隠しているのかの真相までは4話で辿り着けなかったものの、鹿乃子の心情にこれから大きな変化を与えていく存在になりそうだ。 左右馬と鹿乃子の前に立ちはだかる謎は、人形の呪いが引き起こす怪異なのか、それとも品子の嘘が生み出す別の存在なのか。鹿乃子が「双子なのか?」と問いかけた際、品子はそれを否定した。では、あの屋敷には人形の他に何が潜んでいるというのだろうか。名探偵・左右馬が次週ついに真相を暴いてくれるはずだ。
すなくじら