昨年の医療費が11万円でした。「医療費控除」でいくら還付されますか? 大した額ではないなら手間もかかるし確定申告したくないのですが。
医療費控除で、実際にいくら税金が戻ってくる?
医療費控除によって取り戻すことができる税金は所得税ですが、医療費控除額がそのまま還付されるわけではありません。医療費控除額に、確定申告する人の所得税の税率をかけた分が還付金になり、以下のような式で求められます。 還付金 = 医療費控除額 × 確定申告する人の所得税の税率 では、実際に医療費控除で、いくら所得税が還付金として戻ってくるか試算してみましょう。支払った医療費が1年間で11万円だった場合、医療費控除額は10万円を引いた1万円となります。 所得税率が10%の場合、還付される所得税は1万円×10%で、1000円となります。 所得税率が20%の場合、還付される所得税は1万円×20%で、2000円となります。 適用される所得税の税率は人によって異なり、自分に適用される税率は、課税される所得金額によって、図表1の所得税の速算表に該当する税率となります。
出典)国税庁「No.2260 所得税の税率」 還付される金額は、医療費控除額が大きく、かつ年収が高い(課税所得金額が高い)人ほど、大きくなる傾向があります。 ◆医療費控除で住民税の負担も軽減される 医療費控除の確定申告をすることによって、課税所得金額から医療費控除額分が減ることになります。それが翌年の住民税の計算に自動的に反映されることにより、住民税の負担も軽減されます。 住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。所得割の税率は所得に対して10%で、前年の1月1日から12月31日までの所得から所得割が算定されます。 医療費控除によって負担軽減されるのは、住民税のうち所得割の部分となります。例えば、医療費控除額が1万円の場合、翌年の住民税で軽減されるのは、1万円に所得割の税率10%をかけた1000円となります。
医療費控除を受けるために確定申告する際の注意点
医療費控除を受けるための確定申告をする際に、注意したい点があります。 ◆ふるさと納税でワンストップ特例の申請をしている場合 ふるさと納税でワンストップ特例の申請をしていた人が、医療費控除を受けるために確定申告をする場合、ワンストップ特例の申請は無効となります。そのため、確定申告をする際には、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります。 ◆セルフメディケーション税制を利用する場合 セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、スイッチOTC医薬品の購入費用が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除を受けることができる制度です。2017年1月から5年間の特例として始まりましたが、2022年1月より5年間延長されています。 なお、スイッチOTC医薬品とは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)が、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品として転用されたものです。購入の際の領収書等には、セルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されます。 セルフメディケーション税制を利用する場合も確定申告が必要ですが、医療費控除とセルフメディケーション税制の両方を利用できないことに注意が必要です。 医療費控除とセルフメディケーション税制は、利用条件や控除限度額が異なります。そのため、それぞれの制度の内容を理解して、お得な方を選んで申告するようにしましょう。