阪神・金本監督が「シルエットがある」と絶賛したドラ1・大山の対応力
阪神が1日、沖縄・宜野座でキャンプイン。別メニューとなったFAで移籍してきた糸井嘉男の初日動向や、新外国人のエリック・キャンベルの屋外バッティング初披露、今季に復活をかける投打のキーマン、藤浪晋太郎の変貌への意識や、鳥谷敬の崩れていたポイントの位置を確かめる丁寧なバッティングチェックなど、見所満載のキャンプ初日だった。 だが、特に目をひいたのは、背番号「3」をつけたドラフト1位、大山悠輔内野手(白鴎大)の対応力。フリー、特打を、じっと見守っていた金本監督が、思い立ったように大山をつかまえ打撃指導を行った。右ひざの動きを自ら、お手本見せながら矯正した。 「体重移動させるための右の後ろひざの動きができていなかった。右ひざを回すようにしてしまっていた」(金本監督)。さらに、バットのトップの位置も「もっと深く入れてみろ」と指示。すると、その直後の打席で、左中間スタンドに目の覚めるような打球が飛んでいったのだ。 “言われてすぐ”は、なかなかできるものではない。この日100スイング以上をして、結果12本の柵越えをマークした。いわゆる三振かホームランか、のパワーに任せた“飛ばし屋”ではない。そのフォームに癖はなく、タイミングの取り方も含めて、安定感を兼ねた頼れるスラッガータイプだろう。 金本監督も、その対応力を高く評価した。 「ちょっと言ったら、いきなり柵越え。器用さというか、順応性、対応力は評価できる。打者としていい雰囲気を持っている。打撃フォームのシルエットとか、間とかにね。打球に角度を持っているから楽しみなんだ。後ろひざの使い方を覚えて、トップが作れるようになっていくと、打球も強くなっていくよ」 ヤクルトの山田哲人がそうだったように、いかにプロの世界へ対応できるかは、野手の成否を分ける重要なポイント。徹底して鍛えられ、叩き上げからプロ仕様に変貌して、レギュラーをつかんだ金本監督にすれば、その対応力、つまりセンスを持った大山に、大きな可能性を感じたのではないか。 だが、まだプロとして必要な体の強さ、プロのスピードに押し負けないパワーのようなものはない。1年間の長丁場を戦う体力も当然、難しいだろう。 金本監督も、そのあたりはしっかりと見極めていて「体力やスイングスピードは昨年の高山と比べると正直、劣っている。時間がかかる印象はある。プロ野球で必要な筋肉というのは、徐々に自然についてくるものもあるからね。でも対応力がいいから、いきなり1軍で使えるかもしれないけどね」と言う。 さっそく、その実戦での対応力を見るため紅白戦(8日予定)で起用する考え。 この日、大山は、報道陣から金本監督のコメントを聞かされると、「(金本監督に)指導していただいて、すごくいい感じの打球が飛んだ。これを続けていくことが大事だと思います。雰囲気だけで終わらず、結果を残せる選手になりたいです」と、浮かれることなく、気を引き締めた。 よほどのスケール感を持つ選手でない限り、あくまでも新人は計算することのできないプラスアルファの戦力。まして三塁のポジションには、新外国人のキャンベルが予定されている。大山の体力的な現状からすれば、2年後、3年後をにらんだ育成を考えた方がいいのかもしれないが、今季、対戦相手に予備知識のない短期間でも戦力になれば儲けものである。それだけの可能性は秘めた楽しみなドラ1なのかもしれない。