財政健全化目標3年ぶり明記も 「経済あっての財政」で機動的な歳出容認
政府が21日に閣議決定した「骨太の方針」の中で、令和7~12年度の経済財政計画を策定した。財政の健全性を示す国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の7年度黒字化目標を3年ぶりに明記し、見た目上は財政健全化路線の色彩を強めた。ただ、物価高が続き日本経済は盤石とはいえず、機動的な歳出も容認する書きぶりとなった。 【表でみる】通常国会で成立した主な法律 ■危機対応から平時の財政運営へ 「経済再生と財政健全化を両立させる歩みをさらに前進させる」。新たな計画には、今後の経済財政政策の方向性についてこう書き込まれた。PB黒字化目標を堅持する一方、8年度以降は数値目標の設定を見送った。 日本銀行がこの先利上げを進め、「金利のある世界」が本格的に訪れれば、国債の利払い費が増える恐れがある。経済危機や自然災害の発生に備える観点からも、新型コロナウイルス禍の下での危機対応から、平時の財政運営へと軸足を移す必要がある。 有事の際は財政健全化目標によって「状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とも指摘し、「経済あっての財政」のスタンスを鮮明にした。 ■高まる物価動向配慮の必要性 首相はこの日、さっそく新たな物価高対策を打ち出した。電気・ガス料金の軽減策を復活させるほか、低所得者向けに給付金を設ける方針だ。 補正予算を組むことになれば、財政健全化の足取りは遅れる。だが、重要なのは経済の好循環を定着させることだ。 第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「財政運営は前例を踏襲する形になり、当初予算は絞って、補正予算を緩めるスタイルが今後も続く可能性が高い」と指摘。その上で、民間の投資を引き出して経済を活性化させるには「政策の予見性を高める意味でも、中長期事業は当初予算に計上するのが正攻法だ」と語る。 財政政策を巡っては、物価動向に配慮する必要性も高まっている。というのも当初予算の規模は名目で横ばいが求められ、インフレが進むほど目減りする構造になっているためだ。星野氏は「物価上昇にどう既存予算を対応させていくのかという議論が足りていない」と危惧している。(米沢文)