<16カードここに注目 センバツ交流試合>智弁和歌山は伝統の強打健在 エース村上に期待がかかる尽誠学園 第6日第2試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。17日の第2試合で対戦する智弁和歌山(和歌山)と尽誠学園(香川)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する。※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む。 【写真特集】10キロプラスでダッシュする尽誠学園の選手たち ◇智弁和歌山・小林は速球に威力 尽誠学園は高めのボール見極められるか ともに打力が持ち味だが、投打ともに智弁和歌山の力が上回る。ポイントは智弁和歌山の打線を尽誠学園のエース左腕・村上侑希斗がどう抑えるか。5点程度の勝負に持ち込めれば、尽誠学園にも勝機は十分にある。 智弁和歌山は2019年秋の公式戦でチーム打率が3割6分6厘。俊足で出塁率5割超を誇った細川凌平、シュアな打撃が光る綾原創太、飛ばす技術は一級品の徳丸天晴ら昨夏の甲子園経験者を擁し、「強打の智弁」は健在だ。尽誠学園の村上はスライダーやチェンジアップなど変化球を効果的に織り交ぜ、相手に的を絞らせない投球をしたい。 智弁和歌山のエース小林樹斗は速球に切れのある本格派右腕。左腕の矢田真那斗は変化球の制球がいい。ともに昨夏の甲子園のマウンドを経験し、継投の選択肢もある。 尽誠学園は仲村光陽、福井駿、宝来真己らを軸に、19年秋の公式戦ではチーム打率3割5分2厘をマークするなど打線に力がある。小林樹を攻略するためには、球威のある高めのボール球に手を出さない選球眼が求められる。立ち上がりなどに走者をためてプレッシャーをかけられれば、得意の集中打も期待できる。【新井隆一】 ◇秋は100安打、74得点 本音ぶつけ合い結束した智弁和歌山 5季連続出場となった2019年夏の甲子園では、星稜(石川)との3回戦で見応えのある熱戦を演じた。延長タイブレークの末にサヨナラ負けしたとはいえ、4番を担った徳丸天晴(2年)ら当時のメンバーが多く残り、甲子園での貴重な経験を糧に再出発した。 しかし、チームはいきなりつまずいた。8月の県下新人戦では、3回戦でまさかの敗退。その後、投手陣と野手陣は、ミーティングで本音をぶつけ合うようになった。秋の公式戦を勝ち進むにつれ、徐々にまとまっていったという。近畿大会1回戦は初芝立命館(大阪)に快勝。続く兄弟校の智弁学園(奈良)との準々決勝は13-17で敗れたが、最後まで粘りを発揮した。 チームを率いるのは、プロ野球・阪神などでプレーしたOBの中谷仁監督だ。甲子園で監督として歴代最多68勝を挙げた名将の高嶋仁さんからバトンを受け継ぎ、約2年になる。センバツ交流試合に向け、中谷監督は「甲子園で負けないよう、勝利に執着して戦いたい」と決意を語る。 伝統の強力打線は今年も健在。19年秋の公式戦8試合で計100安打、74得点を挙げた。主将で俊敏強打の細川凌平(3年)、ミート力が高い綾原創太(3年)、長打力のある徳丸が中心となる。投手陣は、本格派右腕の小林樹斗(たつと、3年)、緩急がさえる左腕の矢田真那斗(まなと、3年)の二枚看板。小林樹は7月28日の独自大会2回戦に登板し、プロ球団スカウトのスピードガンで最速150キロを計測した。 交流試合について、中谷監督は「選手たちに一つの目標を作ってもらえてうれしい」と感謝し、「3年生は卒業後も自分の支えになるような試合にしてほしい」とエールを送る。【橋本陵汰】 ◇智弁和歌山・細川凌平主将の話 (尽誠学園は)打のイメージが強い。(練習再開後)全員で野球ができることに感謝して、良い準備ができている。最後まで勝ちにこだわり、気持ちを前面に出して戦いたい。 ◇春夏3度の甲子園優勝 78年創設の奈良・智弁兄弟校 1978年に奈良・智弁学園の兄弟校として創設された宗教法人弁天宗系の私立共学校。2002年に小学校を開校し、小中高の一貫教育を推進する。野球部は79年創部。甲子園では94年春、97年夏と00年夏に優勝。OBに西川遥輝選手(日本ハム)、岡田俊哉投手(中日)ら。和歌山市。 ◇「甲子園を楽しんで」智弁和歌山野球部前監督の高嶋仁さん 甲子園で試合をやれることは幸せなこと。多くの人が尽力してくれたことに感謝し、喜びをかみしめて思いきりプレーしてほしいと思います。 試合ではホームランを5、6本打つところを見たいです。主将の細川凌平選手や中軸の徳丸天晴選手ら、(本塁打を)打てる選手はそろっています。 昨夏の甲子園の2回戦の明徳義塾(高知)戦で、1イニング3本のホームランを放ったように、「ここぞ」という場面で畳みかける、智弁らしい強力打線を披露してほしいですね。 小林樹斗投手や矢田真那斗投手にも成長した姿を見せてほしい。勝っても負けても一試合のみ。特に3年生は最後なので、甲子園を楽しんでもらいたいです。 ◇「逆転の尽誠」驚異の粘りで14年ぶり秋の香川王者に 相手にリードを許しても、終盤に追い上げて逆転する。そんな粘り強さが持ち味の選手たちは「絶対に諦めない」という強い気持ちで、試合の流れを引き寄せてきた。2019年秋の県大会では、準々決勝から3試合連続の逆転勝利で14年ぶりの優勝を果たし、四国大会は準優勝した。 秋の公式戦8試合のチーム打率は3割5分2厘。中心は4番の仲村光陽(3年)だ。本塁打2本を放ち、チームトップの11打点を記録。勝負強い打撃は頼もしい。主に2番を務める井脇(いのわき)将誠(3年)はセーフティーバントなど小技が巧みで長打力もあり、攻撃の起点となる。 投手陣はエースの左腕・村上侑希斗(ゆきと、3年)が軸となる。変化球を織り交ぜて「打たせて取る」投球を心がける。守備は8試合で4失策と堅実だ。福島武颯士(むさし、3年)や福井駿(3年)ら俊足を生かした外野手の守備範囲は広い。主将の菊地柚(ゆず、3年)と仲村の二遊間も投手を支える。 部活動の自粛期間中は、素振りや体幹トレーニングなどの自主練習を続けてきた。全体練習を再開した後は、紅白戦などを通して実戦感覚を取り戻すことに力を注いでいる。村上はよりボールに力が伝わるよう投球フォームを改良し、球速が140キロを超えた。主軸の仲村は体の軸がブレないスイングを心がけ、打撃に確実性が増したという。 対戦相手の智弁和歌山について、西村太監督は「甲子園常連校を相手にぶつかっていけるのは楽しみ。チーム一丸となって挑みたい」と語る。菊地も「強いチームと対戦できてうれしい。自分たちの個々の能力も上げていき、一試合しかない甲子園で勝ちたい」と意気込んでいる。【喜田奈那】 ◇尽誠学園・菊地柚主将の話 (智弁和歌山は)投打ともにレベルの高い良いチーム。(自分たちの)モチベーションも上がっている。小さい頃からの夢だった甲子園。自分たちのプレーで勇気や感動を与えたい。 ◇OBにバスケットボールの渡辺雄太ら 夏は4強2回 1884年に忠誠塾として創立され、1948年から現校名となった。野球部は47年創部。甲子園での最高成績は89夏と92年夏の4強。OBに谷佳知さん(元オリックス)、伊良部秀輝さん(元阪神)、バスケットボール男子の渡辺雄太選手ら。銃剣道部や男子ソフトテニス部も強豪。香川県善通寺市。 ◇「実力見せる機会できて良かった」尽誠学園生徒会長の北川千夏さん センバツ交流試合の開催が決まって本当にうれしい。選手たちの実力を見せる機会ができて良かったと安心しています。 交流試合が決まってからは、落ち込んでいた選手たちの気持ちも明るくなりました。新型コロナウイルスの影響で、壮行会などの開催は難しいかもしれませんが、地元からみんなで応援したいです。 センバツが中止となって悔しい思いをした分、選手たちは精神的に強くなったと思います。部活動の自粛期間中も、それぞれ自主練習に励み、頑張っていたようです。同じクラスの選手は「強豪校と戦って勝ちたい」といつも口にしていました。交流試合では全力を出し、悔いのないように頑張ってほしい。絶対に勝ってください。