「頑張ってお金貯めたのに」アリシアクリニックが破産、債権者は9万人超 返金される可能性は?
●お金が返ってくる見込みはほぼない
――HPに掲載された文書によれば「支払済みの施術代のうち未施術の分は、返金されず」「現在の破産財団の状況に照らすと、現時点では配当の見込みはないため、未施術分の施術代を返金することは、極めて難しい」とあります。実際に、返金は難しいのでしょうか。 配当の考え方は前述のとおりですが、負債総額が約120億円と多額です。また破産にいたった会社には、あまり財産が残っていないことが多いことから、配当の見込はほぼないと思われます。
●債権者が訴訟を起こすことで返金される可能性は?
――今回のケースで、債権者が集団で訴訟を起こした場合、返金される可能性はあるのでしょうか。 破産手続開始決定がなされると、破産法により、原則として、破産債権者は個別的な権利行使を禁止され、破産手続によってのみ権利行使をすることができます。 つまり、上記で説明した債権届出、配当という手続によってのみ、支払を受けられるということになりますので、破産手続開始決定後は、個別の訴訟によって権利を追及すること自体が許されないと考えられております。 また、上記のとおり、破産手続開始決定後は、破産財団に対する強制執行等は認められなくなりますので、個別に債権を回収すること自体が不可能となっています。 なお、破産手続開始決定前に、既に訴訟が提起されていた場合についても、破産手続開始決定により、訴訟手続きが中断します。中断とは、手続がストップするという意味です。また、破産手続開始決定時に、差押え等の強制執行が既に行われていた場合でも、これらの強制執行は効力を失います。 したがって、上記の質問に対しては、破産手続内で配当が行われることになれば返金を受けられるという回答になりますが、上で述べたように、配当の見込みはほぼないので、現実には返金は受けられない可能性が高いと思われます。 【プロフィール】 森中 剛(もりなか ごう)弁護士 弁護士法人Authense法律事務所 元裁判官。退官後、福岡県にて弁護士活動を開始し、2020年、弁護士法人Authense法律事務所入所。中小企業だけでなく大企業に対しても、予防法務から訴訟対応まで、幅広いリーガルサービスを提供している。