ルマン24時間の舞台で鮮烈デビュー! ブランド初のBEV「A290」が目指したアルピーヌらしい“高性能”
新たな顧客層を開拓
フランスはサルトサーキットで、ルマン24時間のハイパーポールと決勝の合間を縫って、アルピーヌはブランド史上初の純電気自動車(BEV)となる「A290」の市販版を発表した。「ルノー5(サンク)E-TECH」と同じ「AmpRスモールプラットフォーム」を用いつつ、アルピーヌならではのスポーツ性、つまり「ホットハッチの伝統」を電動化の時代に復活させるモデルだ。 【写真】内装もたっぷり! アルピーヌA290をもっと詳しく見る(16枚) 数年前からアルピーヌは「ドリームガレージ」というコンセプトで、ハッチバックとSUVクロスオーバーGT、そして「A110」を代替するBEVのベルリネットという3台のニューモデルを予告してきた。その第1弾がA290だが、プレゼンテーションを行ったフィリップ・クリエフCEOは2030年までに新たに7車種を投入すると明言。電動化の先駆けとなるA290の仕様内容に、さらなる興味と注目をかき立てた。 発表会場には24時間レースを控えたアルピーヌの耐久チームだけでなく、アルピーヌF1を去ることが発表されたエステバン・オコンと、残留するピエール・ガスリーも現れた。前衛舞踏による演出も相まって、華やかな雰囲気に包まれた。 無論、A290の車両コンセプトはアルピーヌらしく軽量でスポーティーであることだけではない。ブランドのレガシーやDNAを受け継ぎつつも、予定調和を潔しとせず、乗り手が主役であるクルマとして、若くて新しい顧客層を開拓すると、CEOは意気込む。A290の着想の元といえる過去のモデルは3台。すなわち1950年代の「A106」、1980年代の「ルノー5アルピーヌ」、そして現行A110という。A106は大衆車「4CV」をベースとし、5はもちろん当時のBセグスモールカーで、A110はアルピーヌの今日的なドライビングプレジャーの象徴。これらの要素をオールインワンとしたのがA290というわけだ。
Bセグメントとしては抜きんでた高級感
シルエットや高い位置に置かれた縦長のテールランプは確かにルノー5、もしくは「シュペール5」を受け継ぐが、フロント4灯が大小で配された新たなライトシグネチャーは、往年のラリーカーの前照灯に貼られたテープがネタ元になっている。コンパクトながらかつての「A110ベルリネット」と同様の地面への踏ん張りを強調した姿勢は、まさしく「Bombinette(ボンビネット=小さな爆弾)」の異名をとった往年の5アルピーヌや「5 GTターボ」に通ずる。 エクステリア同様、インテリアの仕上げの質感も相当に高い。現時点でハイエンドのトリムとなる「GTS」は、ダークブルーとグレーのコンビによるナッパレザーのシートがおごられ、サイドサポートに優れつつ必要なだけの柔らかさを両立させた座り心地だ。グレーのステッチや「A290」のエンボスが入ったアームレストなど、高級感もBセグとして抜きんでている。 コックピットの雰囲気も近未来的でありながらサンクをほうふつさせるもので、10.25インチのメータークラスターと、ややドライバー側にチルトされた10.1インチのタッチスクリーンが、視界の前にワイドに広がる。メーター表示は古典的な2連メーターを踏襲したレイアウトながら、パワーとチャージが左側、速度と航続距離が右側と、相反する要素を巧みに見やすくしている。「D」「N」「R」のボタン式シフトはA110同様で、スノーフレークなどのアルピーヌらしいモチーフがセンターコンソールにあしらわれている。 パワートレインはFWDで最高出力160kW(218PS)・最大トルク300N・mを発生し、52kWh容量のリチウムイオンバッテリーはシャシー剛性を兼ねており、車両重量1479kgで前後重量配分は57:43となる。パフォーマンス面では0-100km/h加速が6.4秒、WLTPモードによる航続距離は380kmをうたう。絶対的なスペックとしては控えめのようだが、アルピーヌらしくシャシーのセッティングやチューニングは通りいっぺんのものにはならないだろう。