TAIKINGとYONCEが語る「足跡」をテーマにしたコラボ曲、Suchmos休止以降の3年半
相手がYONCEじゃないとこの力の抜き方はできなかっただろうなって
―歌詞のテーマに関しては、YONCEくんが一人で決めたわけですか? YONCE:そうですね。タイキが自分のソロ作でもずっと言及しているテーマとしてBrotherhoodがあって、これはもちろんSuchmosメンバーのことでもありつつ、CONNECTION FESを一緒にやってる横浜の地元の仲間とか、音楽で出会った仲間とか、そういう人たちと過ごしている時間とか思い出、体験みたいな歌をタイキはすごく素直に言葉にして歌にするから、俺もその方向かな、みたいなのはもともと頭の中にありました。その中で、「形はどうあれ人は前進し続けていて、その道のりには必ず足跡がある」っていうことをモチーフとして使いたいというか、書きたいなって。 ーそれで「Footprint」=「足跡」というテーマになったと。 YONCE:曲の流れ通りに、一番のAメロから歌詞に着手したんですけど、僕の中で歩くことの象徴がブーツで。ブーツは持ち主と一緒に過ごした時間を物語るものだから、「あの日、あの山に登ってるときにここに傷がついたよな」とか、ブーツを磨いてるときに、そういう思い出を思い出す時間って、靴と話してるのと一緒、コミュニケーションしてるのと一緒だな、みたいなことから、最初のフレーズが思いついて。 ―〈履き込んだブーツのめくれた革と語ろう〉。 YONCE:そこからは俺とタイキが一緒にバンドをやってきた中で見てきたこととか、やってきたこととか、それらが良かったり、さりとて悪かったとしても、でも今は何となく俺らそれを肯定できていて、こうやってまた一緒に何かやってる。それってすごくおかしいけど、最高だね、みたいなことを書きました。 TAIKING:最初YONCEの弾き語りで来たんですよ。「こんな感じになるわ」みたいな。その段階でもう最高で、「これ、めっちゃいいじゃん」「でしょ」みたいな(笑)。 YONCE:ヒップホップ方式じゃないけど、自分のヴァースを自分で書くのか、タイキがほぼほぼ書くのか、俺が書くのか、最初はまだ決まってない感じだったんですけど、俺が思いついちゃったからもう書くわみたいな、「できちゃったわ」みたいな感じで、それをタイキに聴いてもらって、いいねってなったから、それをそのまま録った感じ。 ―TAIKINGのソロではあるけど、もともと違った作り方を試したいっていう目的もあったし、YONCEくんが歌詞を書き切るのもそれはそれでアリだったと。 TAIKING:それで全然良かった。歌詞も自分の形みたいなのがなんとなくあるんですよ。それが俺の場合は結構ストレートでポジティブな印象が自分でもあって、でも今回はそこもぶっ壊してみたかったっていうのはあって。だから半分はTAIKINGソロだけど、半分は自分のソロじゃない感覚っていうか。 ―YONCEくんが歌詞を書くとある種のカウンターとか反骨精神みたいなものが入ってくる。でもやっぱりTAIKINGソロのこのトラックでやってるから、もちろんSuchmosとも違えばHedigan’sとも違う、この組み合わせならではの温度感になってるなって。 TAIKING:そうそう。だから今回は「頭をかちこちにしすぎない」っていうことだけ気をつけてましたね。制作をしてると、「これはこっちの方がいい、あっちの方がいい」っていうふうに見えてきちゃうところがあって、それをシカトするのも結構ムズイいんですよ。でも今回はシカトというかスルーみたいな感じで、「目は通すけど、スルーする」っていうことをいろんな尺度でできた。それによって今回の新しいトライとしては、俺はめちゃくちゃ花丸なところに着地したなと思ってるんですよね。 ―「こうすれば上手くいく」っていうものをあえてスルーしつつ、でも決して無理をしてるわけではなくて、ナチュラルに向かうべき方向に行った感じがします。 TAIKING:相手がYONCEじゃないとこの力の抜き方はできなかっただろうなって。あうんの呼吸感というか、さっきの歌のパート分けの話みたいに、「これだよね」みたいな共通認識が最初からないと出来なかったかなって思う。他の人だとこうはいかないから、本当にYONCEじゃないと、このスルー感でできなかったっていうか。 YONCE:例えばさ、はじめましてじゃないけど、一緒に作るのは初めてみたいな関係値だと、「お、そう来るか」みたいなさ、お互いの感性の探り合いみたいになるよね。 TAIKING:荒谷くんのときはやりたいことが結構はっきりしてて、ある意味着地が見えた状態で制作してたんだけど、今また別の人とも現在進行形で制作をしてて、それはそれでまたYONCEとも荒谷くんとも全然違って、感性の探り合いするのは小っ恥ずかしいみたいなところがあったり。だから同じコラボでも人によって本当に全然違う。 ―この歌詞にしても、広い意味でのBrotherhoodにも受けとめられるし、でもやっぱりSuchmosのこと、2人の関係のことを歌っているとも受け取れて、〈誰も気づかないはずさ こぼれた涙の痕は 背中合わせの旅路で 目印になればいい〉のあたりとかを2人が声を合わせて歌ってるのを聴くと、いろんなことが思い出されたりもして。でもその上で今2人が一緒にやってることがめちゃめちゃいいなと思うし、スペシャルな曲になったなって。 YONCE:そうですよね。別にね、わだかまりがあったから、ここまで一緒に何かやることをしなかったわけではなくて、普通に会って話とかは全然してたし、あえてインタビューでは言いませんけど、その時点での自分たちの境遇の話とかも全然時系列として共有した上での今回の制作だから、やっぱりずっと地続きなんだなって。 TAIKING:そう、地続きなんですよ。このインタビューも、って言ったら変かもしれないけど。 YONCE:でもそうだよね。 ―ちなみに、つい先日Suchmosが表紙になってるミュージックマガジンの情報が解禁になったりもしたじゃないですか? TAIKING:ああ、「STAY TUNE」のミュージックビデオが表紙になってるんでしょ? YONCE:俺はmaya ongakuのメンバーから一昨日聞きました。「YONCEくん表紙っす!」って、ツイッターの画面を見せられて。 ー「2010年代Jポップ ベストソングス100」っていう企画で、僕もあれに参加していて、そしたらこの取材の話も来たから、ホント地続きだなと思って。 YONCE:何かそういう一つの時代を振り返ろうってなったときに、自分たちが思い出してもらえるっていうか、「やっぱ彼らだよね」みたいなふうに挙がる1個の名前になってるっていうのは、それだけのことをやってきた自負もあるし、嬉しいですね。