TAIKINGとYONCEが語る「足跡」をテーマにしたコラボ曲、Suchmos休止以降の3年半
今回の曲に関しては、どうやってライブでやったらいいかわからない(笑)
―では改めて、「Footprint」について聞かせてください。まず曲自体の方向性はタイキくんが決めたわけですか? TAIKING:これ結構二転三転してる曲で、もともと僕が作ってた、それこそSuchmosダッシュみたいなトラックがあって、それをまずYONCEに送って、「こんな曲にしようと思う」みたいなことをやってたんですけど、でもやっぱりこれだとSuchmosダッシュだから、誰か他の人に入ってもらおうっていうので、METくんに「これ全部崩しちゃっていいから、面白い感じにしてもらっていい?」っていうのをお願いして。 ー元のデモはどんな感じだったのでしょうか? TAIKING:初期のSuchmosっぽいというか、16ビートがあって、ファンクな感じで、そこにギターの象徴的なリフが乗っかってるみたいな、俺が思うというよりも、世間が思うSuchmosっぽい曲ってこういう曲なのかな、みたいな感じ。でもそれだとやっぱりSuchmosダッシュすぎるから、METくんに全く違う形にしてもらいつつ、それに対して僕がテコ入れもして。で、YONCEが家に来たときに鼻歌を歌ってもらって、それがメロディーになったんですけど、もともとサビのメロディーがBメロだったんですよ。なんだけど、YONCEが帰った後に「こっちの方がサビっぽい」と思って、ひっくり返したりして。だから結構ぐちゃぐちゃな作り方なんですけど、それによって自分の範疇を超えた曲になったなと思います。サビができて、「これ一緒に歌ったらめっちゃいい」みたいなところから広げていくんじゃなくて、パズルみたいな、「ここにこれを配置して」みたいな感じで、バランスだけ僕がとったみたいな、今回の曲はそういう感じですね。 YONCE:〈答えを探し求めるあまり〉のところがサビだったのか。 TAIKING:そうそう、そこがもともとサビ想定だったんだけど、「こっちがBメロじゃない?」みたいなのがあって。もはやどういうふうにそれを崩して、どういうふうに再構築したかは正直あんまり覚えてないけど、でも結構ぐちゃぐちゃにした覚えがある。 ―YONCEくんは最初にこの曲のトラックを聴いて、どんな印象でしたか? YONCE:俺はそのSuchmosダッシュ感みたいなのはそこまで強く感じなかったけど、でもやっぱりタイキのシグネチャが炸裂しているデモだなと思って。あとはやっぱり自分が歌うのがわかった上でもらってるから、「Aメロの部分はリズミカルな感じだな」とか、そういう展開に応じたメロのあり方みたいなのを頭の中で想像しながら聴いてましたね。曲自体は、特にタイキのデモの段階はかなり爽快な感じだったから、歌詞は逆にそんなに爽快すぎない方がいいかなとか、そういうことを考えてました。 ―METくんは今回が初顔合わせなんですよね? TAIKING:そうですね。会社の人を通してご紹介していただいて、打ち合わせもリモートだったので、まだ実際に会ったことがないんですよ。 YONCE:それも面白いね。ナウい曲なんだ、そういう意味では(笑)。 ―でもやり取りしていく中で、普段の自分とは違うアウトプットになっていって、それが面白かったと。 TAIKING:そうですね。やりたかったけどテクニック的にやり方がわからない部分が何個かあって、例えば、ボーカルチョップのテクニックとかって、サンプラーがちゃんといじれる人じゃないと、ちゃんとはできなかったりして。もちろん自分でもググったりして勉強はしてたけど、あんまり上手くいかなくて、多分そこを通ってきてないからだと思うんですよね。MPCとかを通ってきてない。でもMETくんはバキバキにヒップホップのシーンでやってるので、彼からのデータをもらうと、すごく勉強になる部分もたくさんあって、本当にいろんな実りのある制作でした。 ―スクラッチはもともと入ってたんですか? TAIKING:もともと入れてました。ただ僕はこれまであんまりサンプルを使ったことがなかったんですよ。バンド上がりなところがあったから、「素材は録るもの」みたいなベクトルだったけど、今の音楽シーンのことを、それこそYaffleとかに「どうやったらこういう発想が出るの?」とかいろいろ聞いたりしてる中で、今ってサンプリングのサービスとかあるじゃないですか? ―スプライスとか。 TAKING:そう、スプライスとかをようやく使い始めて、逆に「演奏を禁止にして作ってみよう」みたいな。 YONCE:あー、そういうことだよな。確かに、未知の体験だよね。 TAIKING:要はさ、演奏しちゃうとどうしてもいい感じにはまってしまって、いい曲になってしまう(笑)。でも今回はそのやり方から抜けたいっていうのがあって、METくんにはすごく世話になったというか、いろんなことを教えてもらったりして。普段だったらある程度ライブを想定して曲を作ることも多くて、自分が歌ってるところはギターをなるべく減らしてとか、ライブパフォーマンスのこともちらつきながらアレンジを考えることもあるんですけど、今回の曲に関しては、どうやってライブでやったらいいかわからない(笑)。ライブはライブで全然違うやり方があるから、それはそれで考えればいいかなと思うけど、ここまでライブのことをがん無視して作ったのは初めて。 ―藤井 風さんとかVaundyくんの曲も音源とライブで違ったりするから、そういう影響もあるかもしれないですね。 TAIKING:そう、それはある意味サポートをやって発見したことで、みんな音源は音源として100%素晴らしいものを目指してるんだなと思ったんですよね。だから、どっちかと言ったら下心があったのは俺の方で(笑)、ライブを想定してアレンジを決めちゃってたけど、今回はそういう下心なしで、面白いものにできたなと思います。 ―ちなみに、2人の歌割りはどうやって決めていったんですか? TAIKING:それはわりと独断と偏見で、「YONCEがAメロ、俺が次Bメロ」っていう。 YONCE:最初から「こうだよね」みたいな感じだったよね。俺らの共通の何かが多分あって、共通してピンときてた歌い分けが自動的にこうだった感じがする。だから、逆に言うとあんまり説明はできない(笑)。 ―掛け合いになるところも最初から決まってたんですか? YONCE:俺は最初から掛け合いありきでメロを持っていきました。ブリッジの部分と、掛け合いの前のサビに関してはタイキがメロをつけてて、まだふにゃふにゃしてる状態だったAメロのメロディーを俺がその前につけて、掛け合いのところも「ここは掛け合いだ」って、メロを送った段階から決まってる感じ。歌詞も「この順番で歌うだろうな」と思って書いてるから、俺が言う台詞、タイキが言う台詞のつもりで最初から書いてましたね。 ―そこは最初から考えてたんだ。 YONCE:考えたわけでもなく、もうそのようになる。俺とタイキが長年バンドをやってきた感じで、別に決めるとかでもなく、「もともとこうなってる」くらいの感覚だった気がしますね。