イギリス芸能界でも「性加害」の過去――同様の被害を受けた男性が日本の被害者に“伝えたいこと”
イギリスのBBCが放送したドキュメンタリーをきっかけに、被害者らが声を上げ始めたジャニーズ事務所の「性加害」問題。実はイギリスの芸能界でも、過去に加害者が死亡した後に性加害の実態が明らかになったケースがありました。その被害者の1人であるイギリス人男性を取材し、同じ「性加害」の被害者に伝えたいことを聞きました。 ◇ かつて、イギリスBBCなどでテレビ番組の司会を務め、国民的な人気を集めたタレントのジミー・サビル氏をめぐっては、2011年にこの世を去ってから、子どもたちなどへの性加害問題の詳細が明らかになり、イギリス国内に衝撃を与えました。警察当局の捜査に協力した被害者の数は450人にのぼり、200件以上の性犯罪が行われたことが認定されたほか、サビル氏は「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と断じられました。 被害者の多くは少女でしたが、実は被害者の中には少年も含まれていました。私たちはサビル氏から「性加害」を受けた男性を取材し、被害の実態のほか、日本でも加害者が死亡後に性加害の問題が取り沙汰されていることをめぐり、同じ被害あった人に伝えたいことなどを聞きました。
■ジミー・サビル氏の「犯行」の実態 人気のグッズをエサに誘い出し…
イギリス東部に住むケビン・クックさん。現在は56歳で、妻とともに暮らしています。クックさん9歳の少年だった頃にサビル氏から性被害を受けました。当時のことについて、私たちに話してくれました。 ――つらいご経験だと思いますが、話すことができる範囲で、ジミー・サビル氏から受けた被害について教えていただけますか?
当時、私は9歳で地域のボーイスカウトに所属していました。ある時、ボーイスカウトの中の誰かがジミー・サビル氏に手紙を書き、私たちは彼の子ども向け番組に出演したんです。私たちくらいの年齢の子どもにとって、彼の番組はとても人気がありました。番組内で「ミルクフロート・レース」という牛乳を配達するレースがあって、それに出たかったんです。その撮影自体はとても楽しく、素晴らしい1日だったと記憶しています。 そして別の日に、ロンドンにあるBBCのスタジオでの撮影がありました。出演後、私たちには全員分をまとめた大きなリボンがついた「バッジ」が贈られて、個人では「バッジ」がもらえなかったんです。彼の番組内ではバッジが子どもたちに人気のグッズで憧れの的だったのですが、サビル氏は私に「バッジが欲しいか」と聞いてきたんです。私が「欲しい」と言うと、彼はステージから降りて、私を楽屋に連れて行きました。 そこで行われたことは、当時9歳の子供だった私には、理解できないことでした。 サビル氏は自分の胸に手をやり、私の頭をなでたり全身を触ってきました。そして、はいていたズボンのチャックを下ろして、性器を私の口に無理やり押し込んだんです。私はもがいて泣きました。永遠に続くかのように長く感じました。実際は1分くらいだったと思いますが、最中にドアをノックする音がしました。そして別の若い男が入ってきて、私を殴り、私に彼らの性器を触るよう強要してきました。サビル氏はその男がそこにいる間、ただ見ていて、男が私を殴り性器を押し付けるように促していたんです。その後、サビル氏は彼の手をつかんで殴るのを止めて、何事もなかったかのようにその男は部屋を出て行きました。 サビル氏は私にティッシュを渡し、「もう泣くな、顔を拭け」と言いました。そして、何事もなかったかのように楽屋を出て、戻ったんです。 ――この性的暴行の後に、サビル氏は何か言いましたか? 楽屋で脅しをかけてきました。自分自身のことを「キング・ジミー」だと言って、「誰もお前を信じないだろう。だから誰にも言うな。お前の家は知ってるんだからな」と言い放ちました。まるでテレビに出ている時とは別人のようでした。