橋幸夫「わずか1年での引退撤回。80歳を超えたって、学ぶことも、自分を変えることもできる。脱水からの脳梗塞も乗り越え、僕はまだまだ歌います」
◆「最近、変わったね」と妻に言われて 昨年、僕の引退宣言にともなって、「二代目橋幸夫」のオーディションをしました。約1000人の応募者から選ばれた3人組のユニット「yH2」とは今、コンサートで同じステージに立っています。 まだまだ彼らに教えたいことは山ほどあるけれど、ファンの方たちも喜んでくれていますし、復帰後の僕のそばに若い彼らがいてくれるのはラッキーだなと思って(笑)。ステージを一人で背負っていくのは大変ですが、今後は彼らが僕をフォローしてくれることでしょう。 当初、「私は橋幸夫のファンだから、yH2は応援しないわよ」と言うファンの方もいました。でも僕と一緒にステージに上がっているうちに、いつの間にかyH2のことも応援するようになっちゃってね。 僕ら4人で歌った「恋のメキシカン・ロック」でノリノリになったあるファンの方は、休憩時間にロビーでメンバーにひょいっと近づいて、「あの歌、よかったわよ」と声をかけてくださったとか。 さらに、姉御肌の方などは、「あの歌のときはこういうふうに動いたら」とアドバイスしてくださった。みんなファン歴が長いですから、もう身内感覚なんです。こういう交流のしかたは珍しいかもしれないけど、嬉しいじゃないですか。 yH2の3人は「橋幸夫」の二代目ですから、歌以外にもいろいろ教育しなくちゃなりません。共演する方に楽屋でしっかり挨拶するという礼節の基本から、昔僕が出演した映画を観ることまで、幅広いよ。彼らが歌や演技を通して、橋幸夫流を引き継いでくれたら本望だよね。
そう言えば、復帰宣言の直後、ファンの方から事務所に電話がありまして。 不安げに「どうしましょう……」とおっしゃるのでスタッフが話を聞いたら、「また橋さんにお会いするためにお出かけするから、お化粧しなくちゃ、服も買いに行かなくちゃ。大変だわ!」。これだって、嬉しいじゃないですか。(笑) 最近はステージが終わった後に、グッズを買ってくださったファンの方とツーショット写真を撮るようになりました。昔はそんなことしなかったんです。 握手会で、「ずっとファンでした。頑張ってください」と言われても、僕は黙ったままでした。今は、「え、そうなの。どちらからいらしたの?」なんて、つい会話が弾むこともあります。 「最近、変わったわね」と妻から言われるんです。外出時に変装めいたことをせずに、堂々とファミレスにも行くようになりました。買い物にもついて行きます。デパートの食品売り場へも。 世間や人との距離が縮まったんですかね。優しくなったとも言われますが、自分の意思で、人にもっと優しくしようと思っているんですよ。 僕はまだまだ歌います。新曲のレコーディングとか、やりたいこともいっぱいある。80歳を超えたって、学ぶことも、自分を変えることもできるんです。伸びしろはまだまだある! 僕はそう信じています。 (構成=中嶌直子、撮影=木村直軌)
橋幸夫
【関連記事】
- 橋幸夫「80歳での引退宣言をたった1年で撤回した理由。《復帰》ではなく《謝罪》会見。引退を決意した時に忘れていた、とても大事なこと」
- 橋幸夫「80歳での引退を決意。母の思いに応え《御三家》として歌い続けた60年、やめどきは自分で見極めたかった」
- 舟木一夫、78歳に。「御三家」西郷輝彦さんへの思い「まだ吹っ切れていない。輝さんをステージに立たせたい」
- 加山雄三「脳梗塞と小脳出血でコンサート活動の引退を決意。ラストショーのエンディングでは、本心である『幸せだなあ』の文字を映して」 【2024年上半期BEST】
- 島津亜矢「厳しい母との二人三脚でつかんだ歌の道。成人式のお祝いもなし。歌を覚えるまで押し入れに。のど自慢大会優勝トロフィーは100本以上!」