プロ野球トライアウトの次に待ち受けるセカンドキャリアの壁
川口さんが就職口を世話した人の中には、昼に弁当を買って来いと上司に命じられ、「こんな弁当食えるか」と、理不尽に突き返されるような元プロ野球選手のプライドを踏みにじるパワハラを受けるケースもあるという。どこに就職するかも吟味しなければならないし、吟味する能力も身につける必要がある。 「新しい環境を必死に乗り越えていく人もいますが、我慢できずにまた退職する人もいます。サードキャリアの問題も深刻です。そうならないためにも、まず最初のセカンドキャリアの選択が大事になってきます」 川口さんは、この27日にも一般企業への就職を模索している元選手を集め、元プロ野球選手から社会へ出た日との体験談を聞く機会や、クライアントの人事担当などとの懇談会も用意するセカンドキャリアセミナーを開催するが、選手を社会に送り出す側のNPBや、各球団のセカンドキャリアに対するサポートは、まだまだ不十分。成功例もそこまで多くない。 「戦力外通告をテーマにしたテレビ番組も問題なんです。あそこに描かれているのは、ほんの一部のケースで、野球を続ける選手にフォーカスをしていますよね。でも、現実としては、ほとんどの選手がユニホームを脱がねばならないし、もっと深刻な苦悩に直面しています。僕らのようなセカンドキャリアをサポートする側からすれば、ああいう実態からかけ離れているテレビ番組は邪魔でしかないんです」 川口さんはトライアウトの次に待ち受けるセカンドキャリア問題を切実に訴えて問題提起した。 確かに視聴率は取れるのかもしれないが、トライアウト会場でも、控え室を一室確保してまで大量の撮影スタッフがウロウロする某局の番組制作には違和感を感じた。現役を続けることができたり、コーチになれたり、自らが事業主となっての飲食事業などに成功する人は、100人を超える退団者のうち、ひと握りに過ぎない。深刻なセカンドキャリア、サードキャリア問題に対する解決策を、NPB、球団は、選手会ともタッグを組んで、それなりの予算を組み、もっと積極的に推し進めねばならないだろう。グラウンドには銭が落ちている、だが拾えない奴の後はしらないでは、あまりに無責任かもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)