ドルの信認を長期的に損なう?トランプ再選で浮上する「ドル離れ制裁」とは何か
■ 「ドル離れ」を企てた国に科す制裁とは トランプ新大統領は、米ドルこそが基軸通貨であるという強い信念を持っている。それは経済合理性に基づく考えというよりも、政治的な信条に基づく。実際にトランプ新大統領は、新興国によるドル離れの試みは受け入れられないとして、共和党の側近(トランプ主義者)との間で、ドル離れを試みる新興国への制裁の可能性を模索していたようだ。 米ブルームバーグが2024年4月26日付の記事で関係者の話として報じたところによると、トランプ新大統領の経済顧問らは、米ドル以外の通貨で二国間貿易を行おうとする国にペナルティーを科す構想の検討を開始したという。具体的には、ドル離れを企てたと認定した国に、米国が原材料や先端品の輸出を制限する可能性である。 また、為替操作国への認定という手段も想定されたとみられる。 米財務省は連邦議会に対して、半期ごとに『為替政策報告書』と呼ばれるレポートを提出する。これは米国の貿易相引国のうち上位20カ国・地域を対象に、対米貿易黒字が一定の水準を超えた国に対して、為替介入などを通じて故意に自国通貨安を誘導していないかを調査してまとめたものだ。 米政府はこの報告書で「為替操作国」に指定された国に対して、追加関税などの報復措置に踏み切る可能性に言及する。そうすることで、米国は、指定国に通貨安の是正を迫るのだ。なお、主要国間の協調を重視する民主党バイデン政権は、「為替操作国」のみならず、その前段階に当たる「監視対象国」に認定する国を減らしている。 トランプ新大統領の経済顧問らは、この仕組みを用いて、ドル離れを企てている国に対して、追加の輸入関税を課すなどの懲罰措置を課せばいいと考えたようだ。実際にトランプ新大統領が返り咲いたことで、新たにドル離れという評価軸に基づき、為替報告書で「監視対象国」に認定される国が増える可能性がある。