見知らぬ男性が続けて鳴らしたインターホン 不安に思う中、後日訪ねてきたのは
理由がわかれば納得できる
介護の現場で出会った人から「幸せになる方法」を教わった、と語る介護福祉士でイラストレーターの高橋恵子さん。今度はあなたに、イラストと言葉でメッセージを届けます。 【本編を読む】次のイラストは 「硬い表情で訪ねてきたのは、見知らぬ女性だった」
認知症がある夫が、他の家のインターホンを、頻繁に押し間違えてしまう。 ご近所にたいして申し訳なく思いながらも、同時に、 トラブルに発展する前に、周囲の理解を得ておきたいと願うのは当然の心境です。 私も訪問介護ヘルパーをしていた時に、認知症がある利用者さんの似たような件で頭を下げながら、 内心は少しでも理解を得たくて、お隣さんに直接かけあったことがあります。 ただ、まだ今のように認知症への理解がすすんでいない時代だったこともあり、 そのほとんどにおいて、こちらが望むかたちの理解は得られませんでした。 それは 「ヘルパーさんが入っているようなお宅の人がやることだから、 こっちが我慢するしか仕方ないわね」といったもので、 理解からはほど遠く、“迷惑をかけられている”といった思いがひしひしと伝わってきたものでした。 認知症においての理解とは、 認知症があるご本人の行動の理由を共有してゆくことだと、私は思います。 とはいえ、ご家族など近しい関係であれば、 本人に直接聞いたり、様子を観察したりして、 理由を明らかにしやすいわけですが、 話したこともない相手だとそうもいかないでしょう。 それでも行動の理由を、思いやってみるのことが大切です。 なぜなら、その考察は相手だけではなく、お互いを楽にしてくれるからです。 インターホンを間違って押されても、 異様な行動だと、不穏にとらえることなく、 「あなたの家はここではなく、あっちですよ」と端的に伝えることもできて、胸中も穏やかに収められます。 遅かれ早かれ、誰がなっても不思議じゃない認知症。 一足先に認知症とともに生きる人を理解しようとすることはきっと、 自分自身の未来の居心地の良さへとつながっていることでしょう。 《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
高橋恵子