どの車種もどこでも買える販売チャンネルの統合は一見メリットだらけ……だがマイナス面もある! じつは車種と販売店の「リストラ」も目的のひとつだった
特定車種に強い店舗はまだ残っている
トヨタはほかの日本メーカーとは異なり、いまでもトヨタ店/トヨペット店/カローラ店/ネッツ店の系列を残す。それでも2020年に、全店が全車を扱う体制へ移行した。法人が異なるから系列は残るが、ほかのメーカーと同じく、取り扱い車種は全店共通だ。 そのために、以前はヴェルファイアを専売車種として扱っていたネッツ店からは、「ヴェルファイアのお客さまが、新たに取り扱いを開始した(姉妹車の)アルファードに乗り替えることもある」という話が聞かれる。全店が全車を扱うようになり、トヨタでも売れ筋車種に偏りが生じ始めた。 しかしその一方で、カローラ店やネッツ店からは、「クラウンはいまでもトヨタ店で従来型から乗り替えるお客さまが多く、ほかの系列では売りにくい」という話が聞かれる。トヨタ店にはいまでも高級なイメージが残り、クラウンの販売では有利だ。 トヨペット店は、伝統的に法人営業が強く、以前はハイエースの専売系列だった。トヨペット店では「全店が全車を扱ういまでも、ハイエースは大切な売れ筋車種」としている。全店が全車を扱うと、人気車が売れ行きを伸ばして販売格差が広がる傾向は見られるが、伝統ある車種は特定の系列で売れ続けている。 かつてクラウンの開発者は、「クラウンは、お客さま、販売店の皆さま、トヨタが一緒になって育ててきたクルマだと思う」と語った。販売店と車種の結び付きを残すのはトヨタの強みだ。この特徴を今後のトヨタが生かせるか否か、そこがトヨタの将来にも大きな影響を与える。販売系列を軽く見ることはできない。
渡辺陽一郎