鈴木おさむさんが語るSMAP「謝罪放送」の“真実”…あらがえなかった「ソウギョウケ」の力
本書が持つ、もう一つの“顔”
本書はSMAPの歴史をたどった本ではあるが、同時に男性アイドル論、平成のテレビ史としても読むことができる。
SMAPがデビューした1991年は「男性アイドル冬の時代」だった。しかし彼らは既存のアイドル像を壊し、バラエティー番組にも積極的に出演。同時に、大人の男性でも夢中になれる曲も歌った。鈴木さんは本の中で、その人気を決定づけたのが、96年4月にスタートしたバラエティー番組「SMAP×SMAP」だったと記す。
「初回視聴率が20%を超えました。あれが日本の芸能史、テレビ史を大きく変えたんです。アイドルが若い子の流行(はや)り物で終わるんじゃなく、国民的スターになる。彼らが成功したことで、後輩たちもテレビに不可欠な存在になった」
小説は、同番組に関わったテレビマンたちの奮闘にも触れる。高倉健に出演してもらうために毎週手紙を書き続け、50通も送ったプロデューサー。マイケル・ジャクソン出演に向けての莫大(ばくだい)な出演料をめぐる駆け引き……。面白いものを作ろうと奔走する彼らの懸命な姿も、本書の大きな魅力となる。
「青春の物語、仲間の物語でもあります。なので30代、40代の男性にもぜひ読んでほしい」
様々な人間の努力が実を結んで番組は大きくなり、SMAPのメンバーそれぞれも活躍の場を広げていった。それは、喜ぶべきことだった。だが……。
鈴木さんは「すごくつらいことだけれど」と口にしてから、こう語った。
「後に事務所の力が巨大になりすぎて、メディアとの関係が通常ではあり得ないものとなってしまった。SMAPが変えたことが、最終的に自分たちを壊すものになってしまった」
放送作家を辞めたわけ
鈴木さんがこの春、放送作家を辞めたことにも、実はSMAPへの思いがかかわっているという。
「僕はSMAPのメンバーや、彼らを育てたマネジャーの飯島三智さんの背を必死に追いかけてきました。彼らに必要とされる存在でありたい、振り落とされたくないと、頑張っていたんです。でも、僕のことを必要だと一番思ってほしい人たちがいなくなり、自分の中でスイッチが入りきらなくなってしまった」