鈴木おさむさんが語るSMAP「謝罪放送」の“真実”…あらがえなかった「ソウギョウケ」の力
それがドキュメントではなく、小説となったのには理由がある。
「僕らに正義があるように、事務所側にも彼らの正義があったはず。でも僕はそれを知らないし、調べようとしても(相手は)答えてくれるはずもない。だからルポルタージュのように書くことは不可能でした。けれど、僕が見たことを小説として書くのであれば、いいのではないか。そう考えたんです」
小説に登場する人物の名は、フルネームでは書かれない。しかし、読者にはそれが誰のことかすぐに分かるはずだ。リーダー、タクヤ、ゴロウチャン、ツヨシ、シンゴ。グループを途中で脱退したメンバーの名も、モリクンとして出てくる。また、小説とは言うものの、作中で描かれる出来事も「自分の目で追いかけていた、本当に起きたことです。そこで書いた僕の感情も含めて」。
あの夜、起きていたこと
本書の最大の読みどころとなるのはやはり、1月18日夜の謝罪放送となる。鈴木さんの視点から、時間の経過とともに描かれるとあって、ドキュメント的な迫力も持つ。一部分を引用してみよう。
【午前1時30分】 3杯目のハイボールを頼んだ時だった。 携帯が揺れた。 「大変申し訳ないですが、今から局に来ること出来ますか?」 僕はクラブを出た。
【午前2時15分】 レインボーブリッジを渡っていると、見えてきたお台場のテレビ局。 「今夜の番組の一部を生放送にすることになりました」 彼らが所属する事務所から「こうしてほしい」という強い願いがあり、局側もそれを受け入れて、決まったのだという。
以降、小説は【午前3時30分】【午前6時】【午前9時】【午後3時】【午後6時】【午後7時】【午後7時30分】【午後8時】と、時刻を明示しながら高い緊張感を保ったまま、その時々の出来事を記していく。その間に「僕」(鈴木さん)は、メンバー5人が生放送で解散騒動について謝罪することになったと知る。急きょ、彼らが語る謝罪の言葉を作ることになった「僕」。放送を前にメンバーそれぞれの思いを聞き、一度はその文言を完成させたが、放送開始まで1時間を切った段階で1枚の紙が届いて……。