欧州移籍は「怖いと思うのが普通」 ベンチ生活、降格…それでも「必ず海外挑戦してほしい」【インタビュー】
海外挑戦せずに「後悔していた選手もたくさんいた」
「サッカー選手は、オファーが届いたタイミングと、自分が実際に挑戦したいタイミングが異なるのがほとんど。そのタイミングでしかチャンスが訪れないこともある。様子を見て、もう少し待ってみて、結果的に機会を逃して海外にトライできなかった選手も数多く見てきた。あの時オファーが届いていたのに、行っておけば良かった……と後悔していた選手も、実際にたくさんいた」 とりわけ当時は、Jリーグで主力として活躍すればA代表の道を切り開くことができた。その環境を手放して海外挑戦に踏み切ることは、実際に大きなリスクでもあった。現在はA代表に定着するうえで海外挑戦はノルマとなりつつあるが、安泰がまったく保証されていない渡欧を「怖いと思うのが普通」としつつ、思い切って飛び込むことに背中を押している。 「適した環境にいて、そこで活躍できていて充実した日々を過ごせているからこそ、オファーが届く。それを手放すのは簡単じゃない。僕だって当時は、行かなくていいと思っていた。でも、五輪代表に選ばれたい一心で挑戦した。でも、経験者の身としては、行かなきゃ良かったという後悔はほとんどないんじゃないかと思う」 当然、海外挑戦のすべてが成功するわけではない。大津氏も「僕自身は海外で活躍することは叶わなかった」としながらも、「出場機会はもちろん重要。でも、出場機会よりも大切なものと感じたのが、自分の実力よりもレベルの高い環境に身を置くことだった」と語り、サッカー界の未来を背負う若手選手たちにエールを送った。 「少なくとも僕は、ボルシアMGのハイレベルな環境が成長させてくれて、その経験が五輪の本大会に活かせた。海外で過ごした日々が、価値観を変えてくれて、サッカーを離れた今にも活きている。当時は苦しい思いもしたけれど、今振り返ると、海外挑戦して心から良かったと思える。だからこそ、躊躇せず一歩を踏み出してほしい。経験に、失敗はないから」 [プロフィール] 大津祐樹(おおつ・ゆうき)/1990年3月24日生まれ、茨城県出身。180センチ・73キロ。成立学園高―柏―ボルシアMG(ドイツ)―VVVフェンロ(オランダ)―柏―横浜FM―磐田。J1通算192試合13得点、J2通算60試合7得点。日本代表通算2試合0得点。フットサル仕込みのトリッキーな足技や華麗なプレーだけでなく、人間味あふれるキャラで愛されたアタッカー。2012年のロンドン五輪では初戦のスペイン戦で決勝ゴールを挙げるなど、チームのベスト4に大きく貢献した。23年シーズン限りで現役を引退し、大学生のキャリア支援・イベント開催・備品支援・社会人チームとの提携・留学などを行う株式会社「ASSIST」の代表取締役社長を務める。2024年から銀座の時計専門店株式会社コミットの取締役に就任。
城福達也 / Tatsuya Jofuku