輪島5棟「2次倒壊」 奥能登で震度5強 公費解体遅れの懸念的中
●本社記者ルポ 3日午前6時31分ごろ、輪島市と珠洲市で最大震度5強を観測した地震で、輪島市では能登半島地震で損傷した家屋など5棟が倒壊した。公費解体が進まぬ中、2次災害の懸念が現実となった格好で、中には2階部分が道路に崩落した建物も。早朝で人通りが少なかったことが幸いしたものの、通行人に直撃すればただでは済まなかっただろう。倒壊の危険性がある建物に近づく怖さを、あらためて思い知った。(輪島総局長・中野尚吾) 【写真】3日の地震までは傾きながらも建っていた(5月19日、中谷さん提供)=輪島市二ツ屋町 「いずれ崩れるかもしれないと思っていた。今日(3日)の地震でとどめを刺された」 輪島市役所から近い二ツ屋町の住宅街を訪ねると、会社員中谷博之さん(54)が変わり果てた自宅を見てぼうぜんとしていた。木造2階建ての家屋は元日の地震で壁が「く」の字に曲がり、3日の地震で1階がつぶれたという。 2階部分は住宅前の道路上に落下していた。万が一、人が歩いていれば大けがは避けられなかったはず。近くに住む田中そとえさん(75)は「地震は予告なしやから怖い。外を歩く時も気を付けんなん」と青ざめた表情で語った。 倒壊したり、倒壊の恐れがある建物は速やかに撤去されるのが望ましいが、現状はそうなっていない。中谷さんは4月、市に公費解体を申請したが、「希望者が多く、半年くらいかかる」と言われたという。 市によると、市が全半壊した建物を撤去する公費解体は2日時点で5004件を受け付けた。しかし、このうち、業者へ連絡したのが383件、完了は120件にとどまる。業者不足がネックとなり、思うように作業は進んでいない。 市側は「2次倒壊」を防ぐ手段として「重機を使うボランティアに依頼し、倒壊しそうな建物を事前に解体してしまう方法がある」と説明するが、ボランティアへの依頼も順番待ちとなっていることを考えれば、そう簡単ではなさそうだ。 3日は、小伊勢町の国道249号沿いにある木造2階建て住宅も倒壊し、一部が国道をふさいだ。付近の会社に勤める玉木菊雄さん(81)は、元日の地震で建物の柱が傾いていたと話し、「前から次の地震で崩れるかもしれないと思っていた。危ない建物はできるだけ早く解体してほしい」と願った。