タクシーが駐停車違反! お客さんの指示でも反則金は運転手が払う? ~弁護士に訊いてみた~
交通問題やクルマに関する相談について、法律の見地から分かりやすく解説する連載「クルマと法律」。今回は、街なかで見かけるタクシーについての交通ルール。タクシーがお客さんの指示で駐停車禁止場所に停車し、違反で取り締まりを受けた場合、反則金はお客さん、運転手、タクシー会社の誰が払うべきなのかを弁護士・山崎勇人先生に聞きました。 【画像】お客さんの指示で停車!反則金を払うのは誰? 要点をまとめたスライドでチェック!
■今回の相談はこちら 「お客さんの指示でタクシーが交差点内で停車しました。もし、そこで警察に取り締まりを受けた場合、反則金の支払い義務を負うのは誰なのでしょうか?」
タクシーが駐停車違反! 反則金は誰が払うの?
相談者:前回(クルマと法律vol.12)は、タクシーが交差点内で停車したら道路交通法違反になるのかどうかを質問しました。そこで、交差点内は駐停車禁止なので違反となり、警察に取り締まりを受けた場合、反則金を支払う必要があると教えていただきました。もしお客さんの指示で交差点内で停めるように言われていたら、反則金を支払う義務を負うのは、お客さん、運転手、タクシー会社の誰になるのでしょうか? 山崎弁護士:お客さんが交差点内で車を停めるよう強制したような場合には「共犯(教唆犯)」として処罰される可能性はありますが、基本的には実際に運転をしていた運転手が違反者として罰せられることになります。なお「反則金」については、違反した個人(運転者)が反則金を納付するのが原則です。 相談者:なんだか理不尽な場合もありそうですが、それを判断するのが運転手の役目なのですね。 山崎弁護士:はい。ただし、違反した個人が反則金を納付しない場合には、車両の「使用者」(通常は車の所有者)が代わりに反則金相当額を支払わなければならない場合もあります。なお、「刑罰」の対象は、違反をした個人(運転者)のみなので、車両の「使用者」が罰せられることはありません。 相談者:なるほど。そうすると、タクシー運転手が違反をした場合、勤務先のタクシー会社が反則金を支払わなければならないというケースもあり得るということですね。 山崎弁護士:その通りです。街なかを歩いていると、フロントガラスに黄色いステッカーが貼られているクルマが路上に駐車されているのを見かけることがあると思いますが、これは「放置駐車違反」として取り締まりを受けた車両であることを示すものです。 相談者:見たことも、貼られたこともありますね……。 山崎弁護士:例えば、タクシー運転手が「放置駐車違反」をして取り締まりを受けたにもかかわらず、いつまで経っても反則金を納付しなかったとします。その場合、同人の勤務先であり、車両(タクシー)の所有者(使用者)であるタクシー会社が代わりに反則金と同額の「放置違反金」を支払わなければなりません。 相談者:管理者としての責任が問われるのですね。 山崎弁護士:その通りです。平成18年6月1日の改正道交法により、運行管理義務が強化され、放置駐車違反の取り締まりがより一層厳しくなりました。そこで、「放置駐車違反」について原因行為者である運転者の責任を追及できない場合には、使用者に対して反則金と同額の「放置違反金」の納付を命ずることができることになったのです。 相談者:へえ! そんな改正が行われていたのですか。 山崎弁護士:はい。つまり、タクシー会社は従業員であるドライバーに対し、予め運行経路を確認して駐車できる場所を確認しておく等、従業員による「放置駐車違反」を防止するために必要な措置を講じておく必要があるといえるのです。 相談者:確かに業務上、駐車をせざるを得ないとしたら、どこに駐車すべきかを会社側が指導する必要がありますね。