「もうフツーの部活では絶対に勝てない」コーチの外注進む他校に惨敗。公立校教師の心が「生徒より早く、とっくに折れている理由」
楽器経験者の息子は、1年生にして顧問のお眼鏡に適い、先ごろ行われた地区の大会に出場した。 「入部したときから『うちの部、ヘタかも。やる気ねーし』と息子は言っていましたが、息子の見立てどおり、先日の大会の結果は銅賞でした」 銅賞と聞き、オリンピックの銅メダルを連想した記者は、3番手レベルで「ヘタ」とは、いささか謙遜が過ぎるのではないか、と思わず疑問を呈した。 「吹奏楽の大会では、銅賞は『参加賞』です。参加したすべてのチームは金か銀か銅に振り分けられます。金賞でも、次の県大会に行ける金と行けない金の2種類があり、行けない金は『ダメ金』という屈辱的な通称で呼ばれているんですよ」 里奈子さんの長男がこの部に所属していた頃は、「ダメ金」を獲るとみんなで悔し泣きしたという。 「今や、ダメ金でさえ高嶺の花だというんですから、変われば変わるものです」 息子は銅賞という結果があまりに悔しく、帰宅して報告したとたんむせび泣いたそうだ。以前はエリア内の中学校だけが参加していた大会にクラブチームも出場できるようになったため、練習量が限られる「部活」はこうしたチームに太刀打ちできない。 「金賞は軒並み隣市の中学とクラブチームが獲っていったそうです。なんでも、専門の講師が指導するクラブチームに参加する子が増えたせいで部活動のレベルまで引き上げられているようで、地域移行していない地域の中学校との実力差がはっきりしてしまったようです」 大会の結果が発表されたあと、部活の顧問教諭から保護者に「相談したいことがある」旨の招集メールが届いた。 里奈子さんがそのミーティングに参加してみると、顧問からの呼びかけや保護者間の意見の食い違いで場は大混乱したという。部活動の地域移行の課題が浮き彫りとなったこのミーティングの内容に、部活格差が存在していた。次回では深く探っていく。 取材/文:中小林亜紀 PHOTO:Getty Images