WR-Vの価格をライバルに合わせたホンダの苦境
以上の違いを考えると、ヴェゼルのガソリン車にe:HEV・Zに相当する充実装備のグレードを250万~260万円で用意すれば、WR-Vを発売する必要はなかったかもしれない。 ■お買い得度からも見えるWR-Vのターゲット 最近は各メーカーから「選択と集中」という言葉が聞かれ、メカニズムやグレードの種類を減らす傾向が見られる。 販売台数が伸び悩む状況でコスト低減まで迫られると、「選択と集中」で効率を高める必要も生じるが、「選択」の対象を誤るとユーザーニーズからはずれて売れ行きも下げる。今のホンダにはこのミスが多く、「オデッセイ」「CR-V」「シビック」などは、廃止したあとに復活させている。
WR-Vは価格を重視するユーザーをターゲットとしたため、各グレードの内容を見ると、装備と価格のバランスに特徴がある。一般的には中級グレードを割安にすることが多いが、WR-VはベーシックなXがお買い得だ。 Xにもホンダセンシング、サイド&カーテンエアバッグ、フルオートエアコンなどが標準装着され、中級のZに比べて18万円相当の装備を省いただけだが、価格は25万800円も安い。 Xは価格を200万円台に抑えて割安度を強調するため、209万8800円としたから、装備の割に安価になった。この価格はヴェゼルGの239万9100円と比べて約30万円安く、ヤリスクロス・ガソリンGの215万円と比較しても約5万円、下まわる。
ただし、ヤリスクロスGにはアルミホイールやディスプレイオーディオが備わる代わりに、WR-Vに標準装着されるLEDヘッドランプはオプションだ。 また、室内空間もWR-Vのほうがやや有利で、身長170cmの大人4名が乗車したときの足元空間は、WR-Vでは握りコブシ2つ半の余裕があるが、ヤリスクロスは1つ半にとどまる。後席を使っているときの荷室容量も、WR-Vの458Lに対し、ヤリスクロスは390Lと少ない。