WR-Vの価格をライバルに合わせたホンダの苦境
この現行ヴェゼルに失望したのが、先代ヴェゼルのガソリン車ユーザーだ。先代から現行型へ乗り換えると、出費が大幅に増える。 また、「フィット」からヴェゼルへのアップサイジングや、子育てを終えて「フリード」や「ステップワゴン」から乗り換えるときも、e:HEVでは割高感が生じる。 ■販売計画に達しないヴェゼルの販売台数 この影響で本来、現行ヴェゼルのターゲットであった先代ヴェゼルやフィットのユーザーが、トヨタ「ヤリスクロス」「ライズ」など、安価なガソリン車を用意するライバル車を購入するようになった。
そのために、現行ヴェゼルの売れ行きは伸び悩む。先代ヴェゼルは2013年に発売され、約6年を経過した2019年でも5万5886台を登録したが、現行型は2021年に登場しながら2022年は5万736台、2023年も5万9187台に留まった。 コロナ禍の影響で納車遅延が著しい車種であったが、それを差し引いても、発売直後の新型車としては元気がない。 2021年に現行ヴェゼルが発売されたとき、メーカーが発表した販売計画台数は月間5000台だった。1年間にすると6万台だから、現行ヴェゼルは発売直後から達していない。
「販売計画台数」とは、発売から終売までの平均台数だ。モデル末期に売れ行きを下げることを考えると、発売直後は販売計画台数を大きく超えねばならず、現行ヴェゼルは明らかに達成できないことになってしまう。そこで、WR-Vを投入することになったわけだ。 ボディサイズは、前述のように現行ヴェゼルと同程度だが、エンジンは1.5リッターガソリンエンジン搭載車のみでe:HEVの設定はなく、駆動方式も2WDだけだ。
インド工場で生産する輸入車でもあるから、受発注の効率を考えてグレードは3種類に抑えられ、生産ラインで装着するメーカーオプションも用意されない。外装色も5色に絞った。 WR-Vのグレードは、ベーシックなX(209万8800円)、中級のZ(234万9600円)、上級のZ+(248万9300円)の3タイプ。価格は、先に挙げた先代ヴェゼルのガソリン車G(211万3426円~252万833円)に近い。 さらにヤリスクロスのガソリンG・2WD(215万円)、Z・2WD(243万5000円)、Zアドベンチャー・2WD(255万1000円)にも近い設定になる。