WR-Vの価格をライバルに合わせたホンダの苦境
WR-Vは、先代ヴェゼルのガソリン車の後継という位置づけで、ホンダ車ユーザーがヤリスクロスなどに乗り換えるのを防ぐ役割も担っていることが、価格からもよくわかる。 ■位置づけはガソリン・ヴェゼルの後継だが… WR-Vの売り方をホンダの販売店に尋ねると、以下のように返答された。 「ヴェゼルとWR-Vはサイズがほぼ同じだから、選択に迷うお客様も多い。そこで店舗によってはヴェゼルとWR-Vを並べて展示して、パワーユニットや価格だけでなくデザインも比べられるようにしている。WR-Vのフロントマスクは野性的な印象で、都会的なヴェゼルとは雰囲気が異なり、実車を見ると選択しやすい」
納期などについてはどうか。 「WR-Vが納車を開始する時期は2024年3月ごろだ。現時点(2024年3月上旬時点)で注文を入れた場合、WR-Vの納期は4~6カ月になる」 実はこの取材時、「GはWR-Vと重複するため、このまま廃止する可能性も高い。ただしWR-Vは2WD専用だから、4WDのヴェゼルGは残すことも考えられる」との回答も得ていたのだが、2024年3月14日にヴェゼルの改良モデルが発表され、販売店でのコメントのとおりガソリンGは4WDのみとなった。
ただしWR-Vがヴェゼル・ガソリン車の後継とするには、足りないところも見られる。たとえば、WR-Vのインパネ周辺は、ヴェゼルでもっと安価なGと比べても、質感などが物足りない。 パーキングブレーキは、ヴェゼルではGを含めて全車がスイッチで操作できる電子制御式で、運転支援機能のアダプティブクルーズコントロールも、停車状態まで作動する渋滞追従機能付きになる。 WR-Vではパーキングブレーキはレバー式で、そのためアダプティブクルーズコントロールでの自動停車状態が保てず、時速25kmを下まわると作動が自動的に解除されてしまうのだ。
荷室やシートアレンジも異なる。ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載するから、後席を小さく畳める。後席の座面を持ち上げる機能も備わり、車内の中央に背の高い荷物を積載することも可能だ。 これらの機能がWR-Vには採用されず、シートアレンジは後席の背もたれが単純に前側へ倒れるだけ。しかも、広げた荷室の床に段差ができる。 燃費対策も異なる。ヴェゼルはガソリンGにもアイドリングストップを装着して2WDでは17.0km/L(WLTCモード燃費)となるが、WR-Vは非装着で16.2~16.4km/Lにとどまる。