日本人が見過ごす「精神科の闇」…なぜイタリアは精神科病院を全廃できたのか?有名カリスマ精神科医が起こした「大革命」
WHOも認めた地域精神保健システム
そして1980年、改革の中心だったトリエステは、精神科病院が完全に消えた世界初の都市になった。 当時、トリエステ以外の地域では、まだ旧来の県立精神科病院が残っていたが、これも以後の19年間で少しずつ機能を停止し、1999年3月に当時の保健大臣は、イタリアの精神科病院が完全消滅したことを宣言した。最盛期12万人もが収容されていた精神病棟が消えたのだ。 「WHO(世界保健機関)も、トリエステの精神保健システムを『持続可能な推奨モデル』と認定しています。これは『精神保健の革命』です。世界の誰もがなくせるとは夢にも思っていなかった精神病院を、世界に先立って完璧に廃止したのですから。世界中の人々が必要悪と考えていた、あの鬱陶しい収容病棟を、社会から放逐したのです。ベルリンの壁の崩壊のようなことが、精神保健の世界で起きたのです」 後編『世界が日本にドン引き「精神医療のおぞましい実態」…「精神科病院ベッド数は世界一、不必要な薬漬け治療」課題山積の現実』に続く。
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