第93回選抜高校野球 1回戦 鳥取城北、悲願の春1勝 集中打に熱い拍手 /鳥取
<センバツ2021> 第93回選抜高校野球大会第2日の20日、鳥取城北は1回戦で21世紀枠の三島南(静岡)に勝利した。二回に先制を許したが、五回と九回に得意の集中打で計6点を挙げ、逆転勝ち。鳥取城北はセンバツ初勝利で、県勢としても2008年の八頭以来13年ぶりの勝利となった。次戦は大会第7日、東海大相模(神奈川)と対戦する。【野原寛史、後藤奈緒】 鳥取城北 000030003=6 010001000=2 三島南 「よし、まず1勝だ!」。悲願のセンバツ初勝利を決めた瞬間、応援団は腕やメガホンをぶつけ合って喜びを爆発させた。序盤は緊張からかプレーに硬さがあったナインだが、中盤以降は鳥取城北らしさを取り戻し、夢の舞台で躍動した。 先発はエース右腕の広田周佑(しゅうすけ)投手(3年)。岩美町から駆けつけた祖父の正勝さん(76)は「普段通りの投球をしてほしい」と期待を込めた。二回に1点を先制されたが、スタンドはより大きな拍手で選手たちを励ました。 試合が動いたのは五回。1死一、二塁で中木村連次郎選手(3年)の絶妙なセーフティーバントが相手投手の悪送球を誘い、一気に2者が還って逆転。さらに畑中未来翔(みくと)主将(3年)がしぶとく中前適時打を放つと、スタンドの熱気は一気に最高潮に達した。畑中主将の父、卓也さん(46)は「タイミングが合っていないなりに、うまく打ってくれた。これでみんなが落ち着いてほしい」と話した。 六回に1点を返され、1点差のまま試合は終盤へ。追加点が欲しい九回、1死二塁の好機から1番の松田龍太選手(3年)、2番の中木村選手が連続で適時三塁打を放ち、畑中主将も左犠飛で続いて計3得点を挙げ、試合を決めた。中木村選手の父、有一朗さん(51)は「(息子が)これでチームの一員として認めてもらったと思える」と目を細めた。 春夏通じて2回目の校歌を歌い終えたナインを応援団は割れんばかりの拍手で祝福した。松田選手の父、健治さん(51)は「次の相手は強豪だが、自分たちの野球で挑んでほしい」と力を込めた。 ◇録音に心合わせ ○…アルプススタンドの応援団は、吹奏楽部の21人が校内で録音した音源に合わせて赤色のメガホンを打ち鳴らしエールを送った。 甲子園のスピーカーからの力強い音色に、松嶋美優・吹奏楽部長(3年)は「出場おめでとうという気持ちと勝利を願う気持ちを込めた」。地面を太鼓に見立てて練習した平沼英翔選手(2年)はチャンステーマの「狙い打ち」に合わせ太鼓を鳴らした。「下手だけど応援の気持ちは伝わっている」とバチを握る手に力を込めた。【後藤奈緒】 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇危機越え大舞台完投 鳥取城北・広田周佑投手(3年) 「ランナーは出すし、打たれることもあると思う」と大会前に話していた通り、相手打線に8安打を浴び、自身のミスもあって何度もピンチを背負った。それでも勝負どころでは内外角の際どいコースを突き、2失点完投。大舞台でエースの役割を全うした。 直球は130キロ台半ば。全国の強打者を圧倒する球威はないが、打たれても大崩れせず、多彩な変化球を使って冷静に試合を作れるのが強みだ。この日も大林仁投手コーチに「今までやってきたことを出すだけでいい」と背中を押され、夢見たマウンドに立った。 序盤こそ「甲子園の雰囲気に緊張した」とボールが高めに浮く場面もあったが、五回に自身が口火を切った5連打で3点を挙げて逆転すると「そこからは落ち着けた」。連打と野手のエラーで1点を返された六回裏は、1死二、三塁の正念場で伸びのある直球を得意の内角に投げ込み、後続を断った。 山木博之監督は「持ち味を出して、よく頑張ってくれた」とたたえたが、自己採点は制球に課題があったとして「50点」と手厳しい。頼れるエースは「低めにきっちり投げられるように練習したい」と語り、さらなる強力打線と勝負する次戦を冷静に見据えていた。【野原寛史】