賃貸物件「家賃の値上げ」に泣き寝入りしない方法。実は手厚く守られている“借主側の立場”を活かすべき
止まらない円安。上がり続ける税金に物価。賃金が多少上がったところで、実質賃金の低下は止まることなく、なんと23ヶ月連続のマイナスを記録した。庶民の生活実感は苦しくなる一方だ。 かさむ出費に懐が悲鳴を上げるなか、さらなる追い討ちをかけられる人が激増している。家賃の値上げラッシュが巻き起こっているからだ。賃貸物件に住んでいる筆者も他人事ではないし、実際に周囲から「値上げの連絡が来た」と聞いては、次は我が身かと戦慄する日々である。 しかし日本の法律では、実は借主側の立場はかなり手厚く守られている。家賃の値上げに抵抗することはおろか、値下げ交渉の余地さえ大いに存在する。本記事では、実践的に家賃交渉を行う上で武器となるキーワードを紹介するので、賃貸住まいの皆さまにご活用いただけたら幸いである。 なお、取材・監修には、弁護士法人「永 総合法律事務所」の弁護士であり、さらにはいわゆる「宅建」をはじめとした不動産にまつわる資格を複数持っている、菅野正太氏にご協力を仰いだ。
値上げを拒否して住み続けることはできるのか?
毎月の固定支出である家賃が値上げされてしまっては、家計には大打撃だ。増額も引っ越しも避けたいが、はたして値上げを拒否しても住み続けることはできるのかと、心配な人も多いだろう。 結論から言えば、「住み続けることは可能」だ。 「合意更新ができない、要するに賃料が折り合わないまま契約期間が満了しても、基本としては自動的に『法定更新』の状態になります(借地借家法26条1項)。法定更新の場合、期間の定めはなくなりますが、その他は同一条件で契約が更新されたものとみなされるのです」(菅野正太氏、以下同) 借地借家法とは物件の賃貸借の契約を結ぶ上で適用される法律(*1)で、家賃の増減額の請求可否をはじめとしたあらゆるシーンで参照される。この法律がそもそも、構造的に弱い立場に置かれやすい賃借人(借主)を守るために存在しているところが大きいものといえる。 それは複数箇所に書かれた「この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする」との強行規定からも明白で、素人こそ知っておきたい内容だ。 *1……無償貸しの場合などは範囲外