公認不倫を描いた人気漫画『1122』実写ドラマ化!監督&脚本家夫婦が手がけた「リアルな夫婦の本音」とは?
ぶつかれない相手だったら、面白い作品にはならなかった(力哉さん)
──制作中にお二人が険悪な雰囲気になることもあったとお聞きしましたが。 力哉さん ちょっと俺の言葉足らずというか…。劇中に二也が花言葉を言うシーンがいくつか出てくるんです。原作にもあるシーンをふくらませてオリジナルで書いてくれたパートなんですけど、どうしても季節的に用意できない花があって。 ちゃんと理由を説明すれば伝わる話なのに、たまたまロケハンで「花言葉を言う男性ってどう思う?」みたいな話になった際に俺が「花言葉を口にする男ってちょっとダサくない?」って言ったら、スタッフにも賛同者がいたんですよね。それを妻に話すときに、花が用意できないっていう話をすっ飛ばして、「今日、スタッフたちと『花言葉を語る男ってダサいよな~』みたいな話になって」というような言い方をしてしまったんです。それが彼女の脚本をバカにしたように伝わってしまって。 かおりさん 花言葉のシーンはプロット(構想)の段階からあったし、ラストシーンにも出てくる重要な場面なんです。それを変えるとなると、前後も変えなきゃいけない。 力哉さん だから「え、今から変えろってこと?」「もう1年前に書き上げてますけど。ちゃんと脚本読んでた?」みたいな感じになって…やばかったですね。 かおりさん 冷戦状態が長く続きました(笑)。プロデューサーの佐藤さんにも相談したよね。 力哉さん そうでした。結婚していちばん重いケンカだったかも。ただ、このくらいぶつかれない相手だったら、面白い作品にはならなかったと思います。言い訳みたいですけど(笑)。
想いが同じであれば、その夫婦なりの幸せは見つけられる気がします(かおりさん)
──作中の一子と二也のように、葛藤やすれ違いを抱えながら向き合ってこられたのですね。本作に登場する公認不倫や女性用風俗といったテーマは、ご夫婦で取り組むには、少々気まずい部分もあるように思いますが…。 かおりさん 私の中ではフィクションの世界のお話だったので、現実としての身近さはなくて。気まずさもあまり感じていませんでした。 力哉さん いやあ、緊張感はありましたよ、俺はね(笑)。自分で話を持ちかけておいてあれですけど、ドラマの中の出来事を話し合ううえで、俺ら自身の話になったら気まずいかもなと思っていましたから。でも、今の話を聞いて安心しました。 ──それはよかったです(笑)。恋愛のその先にある夫婦の「性」については、どんなふうにとらえましたか? 力哉さん このドラマの始まりと結末は、ひとつの例でしかないと思うんです。一子たちは公認不倫をした結果、もやもやしたりして、そこからまた試行錯誤していきますけど、同じ選択をしてうまくいく夫婦も現実世界にはいるのでしょうし。 一子と二也にしても、俺らにしても、掘ってみればどんな夫婦も独特。まわりに何を言われても、やっぱりその二人でしか成立しない関係性はあると思う。どれだけそれが歪でも、二人のことは二人にしかわからないと思います。 かおりさん 自分たちが幸せだと思う形を見つけるのがいちばんですよね。「絶対にこうなりたい」という想いが同じであれば、その夫婦なりの幸せは見つけられる気がします。 監督今泉力哉さん・脚本家今泉かおりさんインタビュー後編へ続く 映画監督 今泉力哉 1981年生まれ、福島県出身。2010 年『たまの映画』で商業監督デビュー。2013 年『こっぴどい猫』でトランシルヴァニア国際映画祭最優秀監督賞受賞。主な作品に『サッドティー』(2014)、『愛がなんだ』(2019)、『his』(2020)、『あの頃。』(2021)、『街の上で』(2021)、『窓辺にて』(2022)、『ちひろさん』(2023)など。恋愛映画の名手として知られる。現在、最新映画『からかい上手の高木さん』が公開中。 監督・脚本家 今泉かおり 1981年生まれ、大分県出身。地元の看護大学卒業後、大阪で看護師として働くが、映画監督の夢を追い求め2007年に上京。ENBUゼミナールで映画制作を学ぶ。卒業制作の短編映画『ゆめの楽園、嘘のくに』が2008年度京都国際学生映画祭で準グランプリを受賞。初長編監督作『聴こえてる、ふりをしただけ』は、2012年ベルリン国際映画祭「ジェネレーションKプラス」部門で子ども審査員特別賞を受賞した。ドラマ『1122』では脚本を担当。
『1122 いいふうふ』 2024年6月月14日(金)よりPrime Videoにて世界独占配信! 脚本:今泉かおり 監督:今泉力哉 原作/渡辺ペコ「1122」(講談社「モーニング・ツー」所載) https://1122-drama.com/ 撮影/天日恵美子 取材・文/松山梢 企画・構成/国分美由紀