日本ハム・郡司裕也選手HR“カメラ破壊”で注目 打球による物損や観客のケガ「選手は責任負わない」!?
壊れたカメラの修理費を払うべき人は…
続いて、小川弁護士はカメラの修理費を誰が支払うのかについて、以下のように説明する。 「球団が加入している保険から支払われることが予想されます。 また、今回壊れてしまったカメラは、ホームランボールが飛んでくる可能性のある場所に設置されていました。このような場合、球場の所有会社も万一に備え、カメラに保険をかけていたことが予想され、こちらからも修理費が支払われる可能性があります」 では、同様の“事件”がもしアウェイ球場で起きていた場合はどうなるのだろうか。 「本件がアウェイ球場で起きていたとしても、基本的に上記と同様の結論になります。 選手に故意過失は認められないことから、選手は損害賠償責任を負いません。したがって、プロ野球選手が所属する球団、またはカメラを所有する球場の保険によって修理費用が支払われると思います」(同前)
ファウルボール直撃で損害賠償が認められたケースも
今回のケースではボールがカメラに直撃していたが、過去にはファウルボールが観客に接触し、裁判で争われた事例もある。被害者への損害賠償が認められるかは、状況によって判断がわかれているが、認められた事例としては、当時日本ハムのホーム球場だった札幌ドームでファウルボールが観客女性に直撃し、失明したケースが有名だ。この裁判では球団側に、被害女性へ約3357万円の損害賠償を支払うよう命じられている(札幌高裁 平成28年5月20日判決)。 小川弁護士は損害賠償が認められたポイントとして、札幌高裁が判決で「安全配慮義務を十分に尽くしていたとは認められない」と指摘したことを挙げる。では、球団や球場が「安全配慮義務を尽くした」とされるためには、どのような手段を講じる必要があるのだろうか。 「安全配慮義務を尽くしたかどうかは、次の2点によって判断されます。 ①球団側がファウルボールが観客席に飛んでこないようネットやフェンスを設置していたか。設置していたとしても著しく低いといえないか。 ②ファウルボールが飛んでくる危険性につき十分な説明を尽くしていたか。ボールが飛んできた際、警笛を鳴らし注意喚起していたか。 また、特に日頃からプロ野球を観戦しない人に対しては、より高度な注意喚起をする必要があります。 これらの注意を十分行っていなかった場合、信義則(民法1条2項)に付随して発生する観客への安全配慮義務を負っているにもかかわらず、この義務を尽くさなかったと判断されると、損害賠償責任を負うことになります」(小川弁護士) 実際、札幌ドームで失明する被害を受けた女性は、日本ハム側が小学生を招待するという企画に付き添いで来ていた保護者であり、野球観戦の経験や、野球に対する関心がほとんどなかった。 このことから、札幌高裁は判決で球団に対し「より一層配慮した安全対策を講じるべき義務を負っていた」と指摘していた。