消費支出、9月は1.1%減 家計の「消費よりも貯蓄」続く
Tetsushi Kajimoto [東京 8日 ロイター] - 総務省が8日発表した9月の家計調査によると、2人以上の世帯の実質消費支出は前年比1.1%減で、2カ月連続のマイナスとなった。自動車関連への支出減が目立った。物価高が賃上げのペースを上回る状況が続いており、総務省は「家計は消費ではなく貯蓄に回っている」とみている。 内訳をみると、自動車関係費などを含む「交通・通信」が前年比11.8%減、「住居」が同3.4%減などとなった。 総務省の担当者は9月の消費減について「自動車等関係費の20.1%減が最大の要因。新車販売もぱっとしなかった」と説明。その上で「物価上昇が賃上げを上回っていて、家計は消費ではなく貯蓄に回っているようだ。GDP(実質国内総生産)の個人消費も、同様の内容になるのではないか」との見方を示した。 今年に入り消費支出は4月に0.5%、7月に0.1%の前年比増加となったものの、その他の月は概ね1%台のマイナスで、前月比でも減少が続いている。四半期ベースでも、7─9月期の実質家計消費支出は2.2%減と6期連続の減少となった。 今年の春闘では、約30年ぶりに高い前年比5.1%の賃上げ率を記録したが、食品からエネルギーまで幅広い品目での物価高が家計を圧迫し、実質賃金はマイナス圏内に沈み、消費者の節約志向に拍車をかけている。 個人消費はGDPの過半を占めており、アナリストらは、今月公表予定の7─9月期GDPでも個人消費は弱めの数字となる可能性を指摘している。消費の低迷が成長や景気の好循環の足かせになれば、日銀が目指す金融政策の正常化にも逆風になるかもしれないとの声が出ている。 もっとも、個人消費は力強さを欠くが、現状で推移して、米国・海外経済・金融市場が落ち着いている限り、日銀の12月会合での追加利上げは「排除できない」との声もある。 第一生命経済研究所経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミストの新家義貴氏は、消費は少なくとも強さはない、とみている。同氏は「実質賃金もようやく下げ止まった程度で、物価高も一時期よりやや鈍化したが、特に食料品はまだ相当高い。消費がそれ程大きく減っている状況でもないが、個人消費はかなりもたついており強さは見られない」と述べた。 その上で同氏は、7ー9月期GDPは小幅プラス成長、6月の所得税減税があったにもかかわらず個人消費は「期待外れ」だったとみる。物価高に加え地震・台風にも下押しされたが、辛うじて小幅なプラス、とした。 金融政策については「日銀の個人消費に対するハードルはやや低く、消費が多少もたついているぐらいなら、評価を引き下げはしないだろう。12月利上げは海外経済・マーケット次第。米国経済・金融市場が落ち着いてるのであれば、むしろ今は円安になっている状況なので利上げは排除できない」との見方を示す。