娘だもの、面倒見てくれるわよね?…75歳母の言葉で介護に身を投じた貯金3,000万円“心優しきエリート娘”が数年後、破綻の影に脅えパート探しに「私の人生こんなはずでは」【FPの助言】
増える"仕事人間"の介護離職、待ち受ける厳しい現実
在宅介護は施設よりお金はかからないと言いますが、訪問看護に訪問介護、通所リハビリ、福祉用具のレンタルなど毎月の利用サービスへの自己負担は9万円ほど、明美さん自身の国民年金と国民健康保険料の支出も加わり、貯金は年間300万円以上のペースで減少していきました。 また、同居するにあたり1,000万円ほどかけて実家のリフォームを行いました。さらに、介護のストレス解消を言い訳にテレビ通販に走ってしまったことも家計悪化の要因となりました。このままでは、あと6年ほどで貯蓄が底をつきます。 もし、母が亡くなって母の年金も途絶えたら、自分の少ない年金(月12万円ほど)でどうやって暮らしていけばいいのか。明美さんは短時間のパートを探す羽目に追い込まれていきました。 実は、明美さんのケースは、決して特殊なものではありません。厚生労働省の調査によれば、2022年に約7.3万人が介護や看護を理由に離職していることが示されています。その約6割以上が女性であり、40代後半から倍増、キャリア途中での離職が目立ちます。 特に深刻なのは、2025年に迫る超高齢社会の到来です。団塊の世代が75歳以上となり、介護需要が急増する「2025年問題」を前に、介護離職者数はさらに増加すると予測されています。 介護離職には、給与収入が絶たれるだけでなく、将来の年金受給額の減少、再就職の困難さなど、長期的な影響が伴います。明美さんの場合、定年まで勤め上げれば老後の厚生年金は年額50万円以上増額されたはずです。また、5年の空白期間は再就職への障壁となり、離職前の年収の半分以下になる可能性も十分あり得ます。 常勤で働きたくても、短時間勤務のパートなど働き方と収入が限定されてしまうことも。「あの時に親友の助言をもっと真剣に聞いていたら……」後悔しても、失った時間を取り戻すことはできません。
介護と仕事の両立のためにやるべきこと
では、明美さんはどうすれば良かったのでしょうか? まず、完全離職ではなく、介護に関わる制度を活用し、段階的な介護体制作りを行っていくべきでした。勤務先独自の、かつ、公的な制度への知識は外せません。以下に主な制度、やるべきことを挙げておきます。 1. 親の資産の把握 原則として、介護は親の資産からの充当を優先します。 年金の受給額や預貯金額、不動産資産、加入している保険、また借金の内容を確認しましょう。特に認知症が進むと意思判断能力が衰え、資産の凍結リスクもあるため家族信託など事前の対策が重要です。 2. 勤務先の介護支援制度の活用 要介護認定を受けた家族を介護するため、介護休暇や介護休業の取得や給付金をもらうことができます。これらは公的制度ですから、要件を満たせば利用できる権利です。他にも勤務先独自の支援制度についても調べておきましょう。 3. 公的介護保険サービスを最大活用 デイサービスやショートステイを積極的に利用し介護の負担を分散、また、ケアマネージャーと密に相談し状況変化に応じ利用可能なサービスを把握する、などの介護体制を整えることが重要です。 介護の初期段階から、地域包括支援センターや介護の専門家に相談することで、より良い選択肢が見つかる可能性があります。離職は最終手段と考え、収入を確保しながら介護と向き合う方法を模索することが重要です。 介護は長期戦。子である介護者自身の人生とキャリアを守りながら、持続可能な介護プランを立てることが、結果的には親のためにもなるのです。 三原 由紀 プレ定年専門FP®
【関連記事】
- 繰下げ受給で年金が増えているはずが…65歳で「月19万円」だった70歳男性、年金事務所で聞いた年金額に唖然「えっ、難しくて意味がわかりません!」
- 「趣味は貯金」の85歳母が死去…遺産は3姉妹に1冊ずつの「預金通帳」に強烈な違和感。実家住まいの次女の制止を振り切り大捜索、暴かれた真実
- 「月収64万円」「退職金2,300万円」大手メーカーで定年を迎える〈60歳父〉を仲良し家族が祝福。ビールで乾杯も一転、妻が大号泣の大修羅場「何かの間違いでは」
- 頼む、金を貸してくれないか…「年金月24万円」見栄っ張りな元校長の84歳父が懇願。しぶしぶ応じる55歳長男も驚く「老人ホーム請求額」
- 「月28万円」の老人ホームに入居する仲良し夫婦だったが…「年金月17万円」77歳夫急逝で76歳妻号泣。老人ホーム費用払えず強制退去となった「まさかの遺族年金額」