【本城雅人コラム】7年目で初GⅠ制覇となった西村淳…自力でステージを登る『新星』は常に現れる
◇中央競馬コラム「ぱかぱか日和」本城雅人 ◇29日 第58回スプリンターズS(G1・中山・芝1200メートル) 武豊、ルメール、川田の3騎手がそろったスプリンターズSは2019年以来。3人の誰かしらが不在になるのは、この日が凱旋門賞と重なってしまうことが多いからだ。今年は凱旋門賞が来週で、日本のトップジョッキーがそろった。さらに短期免許の外国人2人に、香港馬の参戦でモレイラ、ティータン騎手も加わった。競馬の半分は人対人の争いだと思っている私は、例年以上に楽しみにしていた。 馬も実績あるスプリンターが集まったが、そんな激戦の主役となったのは9番人気のルガルと、7年目で初GⅠ制覇となった西村淳騎手だった。ルガルは高松宮記念以来の休み明け。その春のGⅠは前哨戦のシルクロードSを勝って1番人気に推されたのに10着に大敗。その悔しさを半年間背負いながら、一発勝負で雪辱を果たしたのだから西村淳騎手はすごい。見習い騎手の頃から海外に行くなど強い性格が西村淳騎手の持ち味だが、レース内容も彼らしい攻めての勝利だった。 西村淳騎手の努力とぐんぐん伸びる腕前を見込んで主戦の一人として乗せる杉山晴厩舎での初GⅠ。テレビのインタビューで「うちの馬ではあまり勝たないんですよ」と苦笑いで語っていた杉山晴師だが、かわいがっていた男とのGⅠ勝利はとりわけ感慨深いのではないか。 これまでは春の高松宮記念もドバイワールドカップデーと同週となり、短距離GⅠはトップ騎手不在で行われてきた。日程を動かすべきではないかと、私はこのコラムで書いたこともあるが、今は考えが変わった。外国側がレース日を動かすこともあるのだ。せっかくファンに定着した日程を変えることもない。 トップ不在のおかげで短距離GⅠは若手や苦労人騎手の初GⅠというドラマが生まれてきたが、その考えも改めなくてはならない。日本と海外のトップクラスがそろった中で、新しいGⅠジョッキーが誕生した。騎手のレベルがどれだけ上がろうが、その中から自力でステージを登る新星は常に現れるのだ。 (作家)
中日スポーツ