ロ軍反撃のクルスク州、ウクライナ軍がHIMARSで小隊撃破 一部で前進許す
ロシア西部クルスク州に侵攻しているウクライナ軍部隊について、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は10月1日までの駆逐を軍に命じていた。それを受けてロシア軍部隊は11日、ウクライナ軍が州内で支配しているおよそ1000平方kmの突出部に対して、少なくとも3方向から反撃を始めた。 少なくとも突出部の左翼の2方向、右翼の1方向からのロシア側の反撃に関して、ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトはレポートで「多くの人」を驚かせたと述べている。だが、ウクライナ陸軍の第27ロケット砲兵旅団はこれに驚かなかった。第27ロケット砲兵旅団は、ウクライナ軍で現在40機弱あるとみられる米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)を配備されている唯一の部隊だ。 ウクライナ空軍第14無人航空システム連隊のドローン(無人機)が上空から監視するなか、ロシア軍の1個小隊が、突出部の北西の境界線になっているセイム川の岸にトラック数台で乗りつけた。計数十人の歩兵が下車し、事前に工兵部隊によって仮設されていた浮橋(ふきょう、ポンツーン・ブリッジ)を大急ぎで渡った。 第27ロケット砲兵旅団のHIMARSは、そこに向けて射程90kmでGPS(全地球測位システム)誘導のM30/31ロケット弾を数発発射した。M30/31は空中で炸裂し、擲弾(てきだん)サイズの子弾各400発以上がロシア兵らの上に降り注いだ。 結果は凄惨なものだった。浮橋を渡った先で露出していた部隊はロケット弾2発で被弾した。生き残った兵士らは近くの樹林帯に隠れようとしたが、その真上で3発目が炸裂した。ロシア側に何人の死傷者が出たのかは不明だが、ドローンのカメラは砲撃前に30ほどの動く人影を捉えていたのに対し、砲撃後は10ほどに減っている。 第27ロケット砲兵旅団はロシア軍による突撃のひとつを撃退できたのかもしれない。しかし、ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)の12日の作戦状況評価などによると、ロシア軍は突出部右翼のウラノク村を取り戻しているほか、左翼のスナゴスチ村周辺でもいくつかの村を奪還した。ただ、左翼側の一部ではウクライナ軍の第22独立機械化旅団などが反撃し、ロシア軍の前進を阻んでいるもようだ。