2025年春闘 自動車総連、ベア要求1万2000円も「苦渋の折衷案」[新聞ウォッチ]
「来年の事を言えば鬼が笑う」ということわざもあるが、所得税の非課税枠のいわゆる「年収103万円の壁」については、国民民主党が主張する「178万円」を目指して年明けの2025年1月から引き上げる方向で、自民、公明、国民民主の3党が合意したそうだ。
一方で自動車業界の労働組合でつくる自動車総連(組合員78万4000人で構成)では、2025年春闘で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の要求額の目安として月1万2000円を示す執行部案を発表したという。
きょうの各紙にも「自動車総連ベア目安『月1万2000円』、7年ぶり金額示す」などと大きく取り上げている。それによると、具体的な金額を示すのは7年ぶりだそうだが、「ただ、統一要求でなく、中小企業の賃上げを促すためのものだ」(朝日)とも報じている。
日経も「今回、賃金を一律に引き上げるベアの統一要求ではなく、交渉する際の『目安』として金額を決めた」として「部品メーカーなど中小労組が会社と交渉する際の参考になるため、指針でも賃上げを波及させる効果が見込めると判断した」などとしている。
さらに、自動車総連は19年の春季交渉からベアの統一要求を見送ってきたが、「その背景には最大手のトヨタ自動車の影響もある」と指摘。企業の規模や賃金制度が異なるため一律の設定が難しいとの問題意識から、トヨタの労組は19年から具体的な要求額を示すのをやめており、自動車総連もトヨタの方針に理解を示し、統一要求を見送ってきたという。
しかし、一部の中小労組から「何を基準に交渉すればいいか分からないとの声が上がっていた」とも指摘。このため、2025年春闘では強制力を伴う「統一要求」ではなく、交渉の目安となる「指針」にとどめるのは、要求額を示さないトヨタ労組に配慮した「苦渋の折衷案」ともみられる。自動車総連の場合は「トヨタの壁」を完全に打ち破るには、しばらく時間がかかるようだ。