環境にやさしく乗り心地のいい航空機「ホライズン」 秘密はその革新的な形状
(CNN) 空の旅への需要の世界的な高まりに伴い、航空業界の二酸化炭素(CO2)排出量は、ここ数十年、鉄道、道路、海運を上回るペースで増加している。しかし、その傾向を反転させるための解決策の開発は遅々として進んでいない。 【画像】ホライズンは、二酸化炭素(CO2)排出量の半減を目指している 一部の技術者たちは、燃料消費量、ひいてはCO2排出量を大幅に削減するためには、航空機の形状の刷新が必要だと提案している。具体的には、100年以上にわたり商業航空の主流であった「チューブ・アンド・ウィング」と呼ばれる円筒形の機体と翼で構成されるデザインを廃し、「ブレンデッドウィングボディー(BWB)」と呼ばれる新しい形状を採用している。このBWBは、翼が機体の大部分を占めており、独特な外観の飛行機を生み出す。 エアバスは2020年に、燃料を最大で20%節約できるというデザインを試すために、小型かつ遠隔操作のBWB試作機を作った。また23年には、米カリフォルニア州に拠点を置くスタートアップ、ジェットゼロも同様のデザインを採用した飛行機の開発計画を発表した。この飛行機は200人以上の乗客を収容可能で、同社は、30年までに運航を開始するという野心的な目標を掲げている。 さらにサンディエゴに拠点を置くスタートアップ、ナティラスもブレンデッドウィング機「ホライゾン」でこの競争に参入した。ホライゾンも約200人の乗客を収容可能で、同社が競合機と見ているボーイング737やエアバスA320に比べ、CO2排出量は半分で、燃料消費量も3割少ないという。
新しい乗客体験を可能に
16年に設立されたナティラスは、以前、ホライゾンと同じ革新的な形状をした貨物専用の無人機「コナ」を発表した。 ナティラスによると、コナはすでに400件の注文を受けており、向こう2年以内に実物大のモデルの製造と飛行試験を行うという。 その後、この技術の多くがホライゾンに転用されるが、ホライゾンは通常の操縦室を備え、乗員も乗る。 また同社の共同創設者兼最高経営責任者(CEO)のアレクセイ・マチューシェフ氏は、30年までにホライゾンの運航を開始するとしている。しかし、新型機の設計から完全な認証取得までをわずか6年で行うというのは前例がなく、極めて野心的な目標と言える。 マチューシェフ氏は、BWBデザインの課題の一つは、安定性と制御だと主張する。 同氏は、安定性を確保する方法の一つとして、複雑な飛行制御システム、すなわちコンピューターの活用を挙げるが、ボーイング737MAXは、この制御システムの誤作動が原因で複数の墜落事故を起こしたと指摘する。 そしてもう一つの選択肢が空気力学、つまり機体表面のデザインで、ナティラスはこの方法を選択した、とマチューシェフ氏は語る。 この新しい形状には非常に重要な利点がある。 マチューシェフ氏は、「(この形状により)空気抵抗が30%減少するが、同時に機体の重量も減らせるため、同人数の乗客、同量の貨物の収容が可能だ。これこそがBWBならではの特徴だ」と述べ、さらに次のように続けた。「また小型機は、エンジンも小型なため、燃料消費量も少ない。この二つの要素を組み合わせることにより、1席あたりのCO2排出量を約50%削減できる」 また従来の円筒形の機体よりもはるかに大きな胴体は、機内レイアウトの刷新の可能性を開く。ホライズンの床面積は、従来の航空機よりも約3割広いため、多くの顧客は、ラウンジの復活など、乗客体験の向上を期待しているだろう、とマチューシェフ氏は言う。 しかし、ホライゾンのすべてが新しいわけではない。例えば、エンジンは既存のエンジン技術を使用しており、水素エンジンや電動エンジンという選択肢はない。 「航空業界にはよく言われる冗談がある。『新型機には決して新型エンジンを搭載するな。あまりに危険すぎる』というものだ」(マチューシェフ氏) 同じ理由で、ホライゾンはボーイング737やエアバスA320が収容可能な場所にちょうど収まるように設計されており、空港のインフラを変更する必要はない。